エルダー2020年2月号
37/68

高齢者に聞くエルダー35演歌の大御所を担当したこともあります。NHKホールのリサイタルから全国ツアーまで、すべてのステージの照明を担当しました。もう亡くなられましたが、まるで弟のようにとてもやさしくしていただきました。夢のような思い出です。会社は3度社名変更したものの、30年ほどもちこたえることができました。しかし、体力的にもきつくなり、そろそろ世代交代をすべきではないかと考えるようになりました。同窓会での出会い50代初めのころ、高校の同窓会が東京で開催されたときのことです。久しぶりに出席し、そこで同窓生の一人である株式会社テンポスバスターズの森下篤あつ史し社長に出会いました。そのころ、森下社長は脱サラの後、食器洗浄機メーカーの経営を経て、日本初といわれる厨房用品リサイクルの会社を創業したばかりでした。いろいろ話を聞かせてもらううちにその斬新な発想に魅せられ、舞台制作の経験がある私にはうってつけの仕事であるような気がしてきました。リサイクルの商品を買っていただくには、いかにかっこよく展示・陳列するかが大切であり、舞台づくりの仕事に通じるものがあるような気がしたのです。まだその時点では舞台関係の仕事を少ししていたのですが、アルバイトをさせてほしいと申し入れて面接してもらいました。その後、舞台関係の仕事をすべて終えてから、テンポスバスターズのパート従業員として専念するようになりました。私はいま、川口店(埼玉県)の「調理器具館」のリサイクルコーナーで値づけと陳列を担当しています。東京都内に住んでいるため通勤には往復3時間かかりますが、あまり負担に思ったことはありません。毎日楽しく働いています。親がいないことで自暴自棄になったり、物事を後ろ向きに考えていた時期もありましたが、働き続けてきたことで、ほんの少し前向きになれたような気がします。「テンポス」は「店舗」の複数形で「バスターズ」は掃除屋を意味する。柔軟な発想でいまも会社の舵を取る森下社長には、本誌2014年7月号にご登場いただいた。感謝の気持ちで毎日を生きる勤務時間は朝10時から夜7時まで、休日は月曜日と木曜日です。うちの店舗は業者の方はもちろんですが、登録すれば一般の方も買えるため、お客さまが多い土曜・日曜日は出勤するシフトにしています。店舗に立っていてうれしいのは、やはりお客さまの笑顔に出会えたときです。「中古とはいえこんなにきれいなのに、安く売ってもらって申し訳ない」などという声を聞くと、ともに働く仲間のことまで評価されたようで、モチベーションも上がります。照明は、その人が最高に素敵に見えるよう光をあてることに心を配りますが、リサイクル器具も、最も美しく見えるように工夫を凝らします。こんなに楽しい仕事はありません。かつて若い人の教育を担当していたときによく話していたのは、自らが仕事のなかに楽しみを見つけようということ、また、夢を大きく持ってトライし続けようということでした。それは自分自身にいい聞かせていたのかもしれません。幸い、テンポスバスターズに定年はありません。現在全国に59店舗ありますが、60歳を超える従業員が3割を占め、身近に80歳の方がいるので、生涯現役のお手本にしています。長く働くためには健康でいたいと、20代のころから朝起きたらコップ1杯の水を飲むことを続けています。気がつけば、早く逝ってしまった両親の倍も生きています。父と母がくれた命に感謝して、毎日を大切に生きていきたい。兄をはじめ、道を外れそうな折々に貴重なアドバイスや援助をくださった方々に感謝し、亡き父と母が前向きになった私を見守ってくれていることを願って、毎朝2人の写真に声をかけて出かけます。写真から微笑んでくれる2人が、私の元気の源となっています。

元のページ  ../index.html#37

このブックを見る