エルダー2020年2月号
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2020.240テクノロジーを活用したテレワークへの期待柔軟な働き方を加速するテクノロジーとして、近い将来に社会実装が進むことが期待されるのが、バーチャルリアリティ(VR)やロボット技術を活用した「テレワーク」です。すでに「Sスカイプkype※2」や「Zズームoom※3」などのビデオ通話サービスは日常的に利用できるようになり、簡単な議論は場所を選ばずに進められるようになりました。GoogleやMicrosoftが提供するクラウドサービスにより事務書類は必要な人と迅速に共有して、同時に編集を進めることも可能になりました。Brookings analysis of O*NET and OES data※4によると、アメリカ産業界における仕事内容の変化として、仕事のデジタル化のさらなる進展が予測されています。2002(平成14)年では、もっぱらデジタルデータを扱う仕事の割合は4・8%程度でしたが、2016年には23%と、急速に延びました。その反面、ほとんどデジタルデータを扱わない仕事の割合は55・7%から29・5%に減少しました。また、デジタルデータを扱う仕事ほど、高い平均年収を得ていることがわかっています。2016年の調査では、もっぱらデジタルデータを扱う仕事に従事している人の年収は、およそ7万3000ドル(約800万円)であるのに対して、ほとんどデジタルデータを扱わない仕事に従事している人の年収は、3万ドル(約330万円)と倍以上の開きが出ています。デジタルデータを扱う仕事が増えれば増えるほど、インターネットを介したオンラインで作業を行いやすい業務が増えていきます。このことは、オフィスに出勤しなくとも自宅や旅先で仕事を行えるテレワークを促進する要素になります。さらに、音声認識や自動翻訳などの技術の発達により、視覚機能や聴覚機能を補助するアクセシブルなインターフェース※5を、作業ツールに組みこめる点で、高齢者や障害者に優しい働き方であるととらえることができます。テレワークは今後、高齢者や障害者、柔軟な働き方を志向する労働者の間で、高い収入が得られる働き方として急速に増加することが期待されます。※1 AI・ICT……AI(Artificial Intelligence)は人工知能、ICT(Information and Communication Technology)は情報や通信に関連する科学技術の総称※2 Skype……マイクロソフト社が提供するインターネット電話サービス※3 Zoom……Zoom社が提供するインターネットを活用したWeb会議ツール※4 Brookings analysis of O*NET and OES data…… アメリカ合衆国労働省が運営する職業に関するデータベースに対するブルッキングス研究所(アメリカ合衆国のシンクタンク)による分析―高齢者から始まる働き方改革― 生涯現役時代を迎え、就業を希望する高齢者は、今後ますます増えていくことが予想されます。そんな高齢者の就業を支援するうえで期待が集まるのが「AI・ICT」※1。AI・ICTの活用で、高齢者が持つ知識や技術、経験を効果的に活用できる働き方が実現すれば、現役世代の負担軽減につながります。それが、〝高齢者から始まる働き方改革〞の姿です。東京大学 先端科学技術研究センター 講師 檜ひ山やま 敦あつしで働き方が変わる第4回VR・ロボットが変えるテレワーク2・0

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