エルダー2020年2月号
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̶高齢者から始まる働き方改革̶で働き方が変わるエルダー41仕事・ツールのデジタル化がテレワークの課題を解消するテレワークを阻害する要因としては、遠隔であるために働き手が真面目に仕事を行っているのか労務管理をするのがむずかしいことと、働き手の間でのコミュニケーションが希薄になることによる業務効率の低下を懸念する声があげられます。労務管理に関しては、仕事の報酬の評価基準を従来の仕事に費やした時間分を支払う時間給から、仕事の速さと内容に基づいた報酬体系に転換していくことが一番の解決策になります。働き手にとっては、短時間で求められる成果を出していく方向にインセンティブが働くことになるからです。時間給という報酬体系からの脱却は、テレワーカーにかぎらず、オフィスに勤務する働き手にとっても生産性を向上する方向に変化をうながすと考えられます。一方で、働き手との間のコミュニケーションの支援については、一緒に働いている感覚を共有するための技術が、働き手同士の心理的な距離を縮める手段となります。企業へのテレワーク導入をコンサルティングしている株式会社テレワークマネジメントでは、「Sソココococo※6」と呼ばれるオンラインで画面に表示されるバーチャルオフィス環境を紹介しています。VRやロボットは、この働き手との間のコミュニケーションを拡大するもので、遠隔からできる業務を大きく拡大する技術として期待されています。また、テレワークだけでなく、仕事のデジタル化そのものを阻害する日本特有の要因として根強く残っている判はん子こ文化は、事務手続きを効率化させ生産性を高めるうえでいち早く変えていかなければなりません。ロボットとタブレットの活用で遠隔コミュニケーションを円滑にテレワークにおけるロボットの活用は、「テレプレゼンスロボット」と呼ばれる、遠隔に存在感を伝えるロボットの研究開発により実現されていきます。従来テレプレゼンスロボットは100万円を超える価格帯で研究開発用に販売されていましたが、2010年ごろに欧米を中心に5〜50万円の価格帯のテレプレゼンスロボットが商品化され、一般にも知られるようになってきました。Double Robotics社の「Dダブルouble」というテレプレゼンスロボットは、iPadにセグウェイのような倒立二輪車の足を取りつけることで、iPadがロボットの顔となり、遠隔操作者はiPadのカメラ越しに周囲の様子を見ながら自由に動き回ることができます。Revolve Robotics社の「kクビubi」というテレプレゼンスロボットは、レンズの向きを左右に動かせる台座にタブレット端末を装着することで、卓上の首振りロボットになります。遠隔操作で周辺の様子を見回しつつビデオ通話によりコミュニケーションが可能になります。2014年から2015年にかけて、これらのテレプレゼンスロボットを駆使して、シニアのテレワーク実験をわれわれの研究グループとIBM東京基礎研究所(東京都)との連携で行いました。テレワークの内容は、宮城県仙台市の仙台シニアネットクラブというシニアのITエキスパートのグループが、兵庫県西宮市清瀬台の老人会の人たちにタブレット端末の使い方を遠隔講習で行うというものでした。清瀬台のようなニュータウンでは、若い世代の都会への移住が進み高齢化率がすでに30%〜40%に達している地域もあります。清瀬台では周囲にタブレット端末の活用方法を教えてくれるシニア向けIT教室がないのに対し、仙台では仙台シニアネットクラブのようなシニア向けIT教室の草分け的なコミュニティで、多くのIT講師が育ち、活躍の場を求めています。そこでこの二つの地域をインターネット上で結びつけて遠隔講習会を開くことで、互いのニーズ※5 インターフェース……異なる機器・装置をつなぎ交信を可能とする装置やソフトウェア※6 Sococo…… バーチャルオフィスを通して、オフィス勤務者と在宅勤務者をつなぐコミュニケーションツール(https://www.telework-management.co.jp/services/tool/sococo/)

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