エルダー2020年2月号
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̶高齢者から始まる働き方改革̶で働き方が変わるエルダー43づくようになり、講習会の終わりには写真3のように、テレプレゼンスロボットを通して遠隔地にいる講師と記念撮影を行う受講生も見られるようになりました。当初は欧米を中心にテレプレゼンスロボットの商品化が先行していましたが、現在は日本を中心に首振りだけでなく身振り手振りを使って作業ができるテレプレゼンスロボットの商品化を進める企業が登場するようになりました。Telexistence株式会社は、1980年から「テレイグジスタンス」という、あたかも現場で作業をしているかのような臨場感を持って遠隔操作を行う技術を研究開発されてきた舘たち暲すすむ東京大学名誉教授によって設立され、テレイグジスタンスロボットの商品開発と実証実験を進めています(https://tx-inc.com/en/home/)。株式会社メルティンMMI(東京都)では、巧みな手の動きを伝達し遠隔作業を行えるロボットの商品化を行っています。(https://www.meltin.jp/)。株式会社オリィ研究所(東京都)では、「OオrリiHヒimメe」と呼ばれる遠隔コミュニケーションロボットを商品化しています(https://orylab.com/)。OriHimeは主に障害者のコミュニケーション支援や社会参加支援を対象として開発されました。現在、カフェなどで障害者が自宅からOriHimeを遠隔操作して接客の仕事を行う実証実験などが行われ、メディアからも注目されています。身近になったVRゴーグル拡張していくバーチャル空間もう一つ、世の中の変化として注目しておきたいことがあります。これまで研究開発用途が中心で数百万円の価格帯で販売されていたVRゴーグルが、数万円で一般向けに販売されるようになり、2016年はVR元年と呼ばれるようになりました。学生の間では、手ごろに入手できるVR機器を使ってVR chatというバーチャル空間での遠隔コミュニケーションを楽しむ姿が研究室でみられるようになってきました。離れた場所にいる学生同士が、バーチャル空間で思い思いのアバターという3次元CGの姿に変身して、身振り手振りを交えながら会話をすることができます。そして、2019(令和元)年12月14日には、バーチャル学会という、完全にバーチャル空間のなかだけで参加してプレゼンテーションを行う学会が開催されるようになりました。当研究室の稲いな見み昌彦教授もバーチャル空間のなかで基調講演を行いました。完全にバーチャル空間でのコミュニケーションになると、生身の身体にとらわれる必然性がなくなります。若者のアバターを使って若返った気分で遠隔就労したり、性別を変えたり、SFのキャラクターに外見を変えることができます。さらには、音声変換技術を活用することで自分の声を変えて話をすることができるようになりました。最近ではバーチャルなキャラクターに変身したYouTuber※7であるVTuber※8として活躍する人も見られます。2030年ごろには、ロボットの身体を通じて経験を積んだ高齢の職人が、遠隔から技能伝承を行うようになるかもしれません。そしてますます社会的な活動がバーチャル空間に広がっていき、心身に不安を抱えていても働く機会を得て、社会とのつながりを維持できるようになっていくでしょう。※7 YouTuber……動画共有サービスYouTube上で独自に制作した動画を公開している人または組織※8 VTuber……バーチャルYouTuberのこと。CGで作成したキャラクター(アバター)を用いて動画を制作・公開しているYouTuber写真3  テレプレゼンスロボットの画像に映る仙台側講師との記念撮影

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