エルダー2020年2月号
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2020.248読者のみなさんのなかには、仕事で多忙な日々を過ごしている方も少なくないと思います。働き方改革の浸透にともなって労働時間の管理は厳しくなったとはいえ、その分生産性の向上が求められるという場合もありますから、仕事をする際に感じる疲労度は以前とそれほど変わらないと感じている人もいるでしょう。仕事が忙しくて疲れがたまったときの休日、「外出は控えて、家のなかでゴロゴロしていたい」、「平日に備えて寝だめをするために、いつまでもベッドのなかにいる」という人はいませんか。ところが、こうした休日の過ごし方は疲労回復には効果的ではなく、むしろストレッチやウォーキングなどの軽い運動に取り組むことで身体のコンディションを整え、疲労回復を図れるという考え方があります。これを「アクティブレスト(積極的休養)」といいます。アクティブレストは、日常的にハードなトレーニングを重ねているプロのアスリートも実践している休養の取り方です。アクティブレストを日常生活で実践することで、効果的に疲労回復を図ることができます。そこで今回はこの、アクティブレストについて紹介します。「アクティブレスト」の考え方アクティブレストは、疲労しているときに身体を軽く動かすことで血流の改善を図ることにより、このことで体内の疲労物質の体外への排出をうながして、疲労回復の効果を高めるとする考え方です。日本語では「積極的休養」と呼ばれており、安静や休養、睡眠などといった「静的休養」とは対になる考え方です。アクティブレストは、すでにプロスポーツの世界ではかなり浸透しているといえます。プロスポーツでは、コンディションの整え方によって成績が左右されますから、次の試合に備えるための、試合の翌日の過ごし方が重要だとされています。サッカーのJリーグでは、以前は、試合の翌日を「完全休養日」とすることが常識とされていましたが、アクティブレストの考え方を取り入れたチームが徐々に増え、現在では、試合の翌日にメンバーに集合をかけて、軽い運動に取り組むチームが多いといいます。その効果として、アクティブレストがチームに定着するにつれて、選手のコンディションは向上し、ケガも減ってプレーの質も向上する、という好循環が生まれていったそうです。第9回アクティブレスト(積極的休養)のすすめ国立研究開発法人理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム プログラムディレクター 渡わた辺なべ恭やす良よし 高齢者が毎日イキイキと働くためには、「疲労回復」の視点を持つことも重要になります。この連載では、「疲労回復」をキーワードに、“身体と心の疲労回復”のために効果的な手法を科学的な根拠にもとづき紹介します。科学の視点で読み解く身体と心の疲労回復

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