エルダー2020年2月号
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エルダー51視察団のみなさんと当機構の森川理事ほか人口構造の変化、生産年齢人口の減少という問題に対応するためには、高齢者の労働市場への参加拡大が重要な課題であると思います。高齢者の労働市場への参加を拡大するためには、定年延長がまっ先に考えられますが、韓国では60歳以上の定年義務化が全面施行されてから3年も経っておらず、まだ有効性の検証がなされておりません。また、若年者の雇用の問題が深刻な状況であることを鑑かんがみると、定年延長よりも、高齢者には継続雇用を通じて長く働いてもらうように進めていくことが現実的な選択であると思います。そのためには、高齢者が現在の企業で長く働くことができた場合、企業にインセンティブを与えること、労働者が退職前に再就職支援を受けられるように支援すること、退職した高齢者層に特化した雇用のセーフティネットを構築することなどが重要な政策課題であると考えます。Q2日本の高齢者雇用の取組みで注目していることはありますか。◆日本の「65歳までの高年齢者雇用確保措置」や高齢化対策と事業に注目しています。高年齢者雇用確保措置は定年延長、定年廃止、継続雇用制度の導入など、さまざまなオプションを与えながら65歳までの高齢者の雇用確保を図っており、企業の高年齢者雇用確保を制度的に要求しながらも、選択肢を多様化して企業の負担を軽減しています。また、「高年齢者雇用確保措置」が段階的に導入され、高齢者の雇用延長が現場でソフトランディングするようにしている点も印象的です。最近、日本の未来投資会議で、70歳までの雇用確保を模索しながら考察した、多様な方策などについても注目しています。また、JEEDが高齢者の雇用に関連して展開してきたさまざまな事業や活動にも関心を持っています。◆日本の「65歳までの高年齢者雇用確保措置」の推進過程と政策的効果、そして同制度の実現のために、政府が企業のために支援した政策と事業に注目しています。「65歳までの高年齢者雇用確保措置」は、定年制廃止、定年延長や定年を変更しない継続雇用制度の導入のいずれかを企業が採用するようにして65歳までの雇用を確保するための制度であり、継続雇用制度の導入の場合は、労使協定で基準を決めれば対象者を選別可能でしたが、2012(平成24)年の高年齢者雇用安定法改正により、希望者全員を対象に、雇用確保措置を義務づけました。韓国も短中期的には「65歳までの高年齢者雇用確保措置」と同様の制度の導入を検討している状況です。日本の「65歳までの高年齢者雇用確保措置」が段階的に導入され、高齢者の雇用延長が現場で定着している点に注目しています。Q3今回の視察の感想をお聞かせください。◆今回の視察を通じて、日本の高齢者雇用政策と事業について多くのことを学ぶことができました。日本政府とJEEDなど関連機関が、高齢者雇用の問題に積極的に対処している姿が印象的でした。政策企画者や事業の担当者が、いずれも担当業務について任せられた役割を、責任感と熱意を持って果たしているという印象を強く受けました。◆今回の視察は、韓国より高齢化が先に速まった日本の先進的な高齢者雇用政策と事業について学ぶことができました。今後の韓国の高齢者雇用政策を企画・立案するために多くの示唆が得られたと考えています。日本政府とJEED、JILPTなどが、高齢化問題を克服するため、実態に基づくきめ細かな制度を設計し、その制度を積極的に推進する姿が印象的でした。

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