エルダー2020年2月号
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2020.2522019(令和元)年11月13日、公益社団法人日本産業衛生学会エイジマネジメント研究会が主催、栃木労働局が後援するシンポジウムが栃木県宇都宮市で開催された。テーマは「高齢者が健康・安全に働くための職場づくり」。高齢者雇用において欠かせない高齢者の健康と安全確保について、各方面からの報告が行われた。◇ ◇ ◇胎児期から関係するエイジマネジメントの重要性を示唆メインシンポジウムの第一部に登壇したのは、千葉大学大学院医学研究院で環境労働衛生学の講師を務める能の川がわ和浩氏。能川氏は「生涯現役社会のエイジマネジメント」と題して発表を行った。高齢者の身体機能などについては、平均をとればその傾向を導き出せるものの、身体疾患の観点、身体機能・認知機能の観点、生活習慣・社会的環境の観点(食事、運動、家族構成など)で、個人差が大きいことが特徴と述べた。次に、予防医学とは曝ばく露ろ(危険因子)をできるだけ制御することを推進する医学と説明し、血圧、コレステロール、タバコという三代危険因子による病気の発症率の高さを示したうえで、世代ごとの特徴に合わせた適切な産業保健活動の重要性を示唆した。最近話題の研究の一つとして、妊娠初期の胎児の際に経験した飢餓は、人生のなかでさまざまな体質変化や病気の原因になるという説を引き合いに、エイジマネジメントは胎児のときから必要であり、働く妊婦は母子保健だけでなく、産業保健も必要との考えを示した。また、米国における予防医学のトピックスとして小児期の睡眠に関する研究を紹介。小児科学会が子どもに8〜10時間の睡眠を推奨しているアメリカでは、推奨される睡眠を取らせるために学校の始業時間を遅らせた州で、成績の向上と出席率の向上が見られたという。このことから、子どもの健康を守るためには学校保健と産業保健の連携が重要と述べた。最後に、大手企業が実施した定年退職後の健康追跡調査の結果を報告し、在職中の健康づくりは退職後の健康にもつながると結論づけた。多発する高齢労働者の転倒災害の分析と取組みを発表 第二部に登壇したのは、株式会「エイジマネジメント研究会」がシンポジウムを開催「高齢者が健康・安全に働くための職場づくり」をテーマに発表

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