エルダー2020年2月号
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エルダー53社東芝人事・総務部総務企画室安全保健担当の羽は深ぶか勝かつ也や氏。「多発する高年齢労働者層の労働災害の実態と取組み」をテーマに、東芝グループの現状として、業務上災害発生件数のデータと傾向を発表した。労働災害のなかでは突出して転倒が多く、しかも年齢分布では45歳以上に顕著であると説明し、高年齢労働者の労働災害の防止にあたっては転倒対策が重要だと指摘。そこで、同グループの取組みとして、安全衛生推進計画を3段階にまとめ、グループ内でチェックシートを使って点検を実施。点検結果から5S※1、荷物などの置き方、転倒パターンを分析し、転倒リスクの要因を状態面(通路、階段、天候、履物)と行動面(体勢・姿勢・加齢、柔軟性、行動・経緯)に分類、これらを転倒災害防止のためにチェックする必要がある注意喚起を行った。さらに同グループが「エイジアクション100」(中央労働災害防止協会)※2を活用して実施した取組みを紹介。まず、管理者にヒアリングするなどして現状の把握とチェックを行い、次にエイジアクション100のチェックリストを使って、溶接部門や組立て部門、関係会社など各事業所で点検を実施した。点検の結果、改善点や良好な点の洗い出しにつながったと述べ、エイジアクション100活用の有効性を示した。また同グループで新たにスタートした30、40、50代の年代別の定期健診について触れ、健康推進の取組みについての報告を行った。最後に、安全・健康の提供が企業の使命であるとして、発表を締めくくった。高齢者を活用する全国の中小企業の事例を紹介第三部には、当機構の前雇用推進・研究部長で、現在、厚生労働省栃木労働局の浅野浩美局長が登壇した。「高齢者活用企業に学ぶ安全・健康に働き続けるための取り組み・工夫」と題し、全国での中小企業の好事例を紹介した。高齢者の強みはスキル、経験などであるが、一方で個人差、モチベーション、健康面が課題になることがある。こうした特徴を持つ高齢者が働きやすい職場づくりの工夫、また健康で安全に、より長い期間働いてもらうための工夫として、勤務時間や、多能工化、業務内容の見直しをしている企業があることなどを紹介。さらに栃木県で高齢者が活躍している企業事例として、製造業、運送業、印刷業、社会福祉法人、卸売業、警備業の事例を報告。また、全国から職場環境の整備や、徹底した健康管理支援や安全教育、体力的負担の軽減を行っている会社などを紹介した。まとめとして、当機構の調査結果をもとに人事管理制度を整備し、処遇・人事評価を改善するほどに、高齢従業員のモチベーションの課題は減少し、健康面が課題になると述べた。◇ ◇ ◇同シンポジウムを主催したエイジマネジメント研究会は「加齢に伴ともなう諸機能の変化を知り、適切な対応・対策を行うことで暦年齢にかかわらず、活き活きと働くことができる力」を「エイジマネジメント力」と位置づけ、労働者の健康度や生活機能、労働適応能力の保持・増進にはどのような取組みが必要なのか学術的、実務的な観点から検討している団体。今回のシンポジウムはエイジマネジメント研究会が一般に向けた情報発信を目的に開催しているもので、これまでに20回、秋のシンポジウムは7回目を数える。メインシンポジストの報告後は、総合討議と一般演題の発表が行われるなど、さまざまなプログラムが開催され、シンポジストの軽快な語り口に時折会場内が笑いに包まれるなど、終始和やかな雰囲気のうちに閉幕した。会場の様子※1 5S……整理、整頓、清掃、清潔、しつけ※2 エイジアクション100…… 高年齢労働者の安全と健康確保のための100の取組みを盛り込んだチェックリストを活用して、職場の課題を洗い出し、改善に向けての取組みを進めるための「職場改善ツール」

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