エルダー2020年2月号
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エルダー57石川邦くに子こ 著/方ほう丈じょう社/1500円+税川かわ上かみ憲のり人と 著/大たい修しゅう館かん書店/1700円+税村むら松まつ貴たか通みち 著/ごま書房新社/1500円+税著者は、社会保険労務士として年間3000件以上の経営相談を行い、顧問先は約300社、自らも人事コンサルティング会社を経営しており、その18年間の体験と実績を通して得た、「小さくても強い会社」をつくるための実務、法律知識などを、本書を通じて伝えている。本書で対象としている会社は、経営者と従業員とを合わせて10人から300人ほどの規模。「強い会社」とは、「小さな会社ならではの機動性、意思統一のやりやすさがあり、喜き怒ど哀あい楽らくを一緒に体験でき、地元に根ざして堅く実績を上げられる会社」だとしている。第1章では「成長する会社」に共通する特徴や経営の仕方について紹介。「将来にわたり社員の給与体系をオープンにする」、「経営陣を身内で占めず、女性・年配の社員が多い」などを特徴として挙げている。第2章では業績向上の源として人事制度を明確に構築することの必要性を説き、第3章では労務リスクについて解説。そのうえで、会社のブランド力が高まる「ホワイト企業」(=魅力的な企業)になるための道筋を示している。企業の経営者や人事労務担当者にとって、参考になる一冊だといえるだろう。マイナスをゼロに戻すようなネガティブな心の健康状態への対応とは異なり、プラスの視点を持って、より広い範囲の人を対象とする「働く人の『ポジティブメンタルヘルス』」が、職場のメンタルヘルスの新しい考え方と対策として注目されている。従業員のポジティブな心理状態を高めることを目的とした活動で、メンタルヘルス不調の予防や生産性向上を図る対策として、大きな可能性を持つとされている。本書は、22の事例を交えて、ポジティブメンタルヘルスの考え方から始め方、実践のポイントをわかりやすく解説。人事労務担当者や管理監督者に役立つ一冊となっている。ポジティブメンタルヘルスの取組みは、すでに行っている施策に「ポジティブな視点」を入れることから始めることができ、例えば多様な従業員の存在に配慮した取組みやワークライフバランス施策、チームワークに着目した評価制度も、従業員のポジティブメンタルヘルスを向上させてくれるものになるという。職場のメンタルヘルス対策の基本的な考え方やポイントをまとめた、著者の前著『基礎からはじめる職場のメンタルヘルス』(本誌2017年12月号参照)とともに参照してほしい。著者の石川邦子氏は、本誌2018年11月号「リーダーズトーク」に登場していただき、キャリアカウンセラーとしての視点から「人生の転機との向き合い方」について語っていただいた。そこでも触れられているが、著者は58歳のときにがんに罹患し、それ以来、がん治療と仕事の両立を実践している。本書には、病気という大きな転機と向き合い、仕事との両立を実践してきた経験がまとめられている。本書は、近年のがん治療における基礎的な知識の紹介に始まり、がんと告知されたときに実践してほしいこと、がんサバイバーとしてのキャリアデザイン、がん治療におけるお金の話、そして治療と仕事の両立が可能になる職場づくりにおける現状と課題などを取り上げ、それぞれ具体的な取組みとともにまとめられている。治療と仕事の両立は、高齢期まで働くためにクリアすべき課題の一つである。高齢期には、がんにかぎらず、だれもが予期せぬ病気に罹患する可能性が高まる。そのときに安易に仕事を手放さないことが、これからの高齢者雇用の充実につながると思われる。人事労務担当者ばかりでなく、中高年期以降の働く人にもぜひ手に取ってもらいたい。「小さくても強い会社」の社長になる! めざせホワイト企業! 会社のブランド力の高め方ここからはじめる 働く人のポジティブメンタルヘルス―事例で学ぶ考え方と実践ポイント未来を見つめてがんと共に生き、考え、働く治療と仕事の両立を目指して年間3千件超の経営相談をこなす著者が明かす、企業経営に欠かせないエッセンス人事労務管理、職場のマネジメントのすべてに「プラスの視点」を入れるあきらめずに働き続けたい人に贈る実践の記録

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