エルダー2020年3月号
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2020.38高齢社員人事制度の基本戦略労働力人口に占める60歳以上人口の割合は、すでに5人に1人となっています。65歳以上では、およそ10人に1人。つまり、高齢者雇用は、もうあたり前の時代になっています。そうしたなかで、どのように人事管理を整備したらよいのか。本日は、高齢社員の人事戦略と人事管理について、最新の研究成果をふまえてお話しします。高齢者雇用があたり前になってきた時代の人事管理は、まず、「高齢社員は戦力である」ということを経営方針としてきちんと位置づけたうえで考えることが重要です。日本ではいま、基本的にほぼすべての企業が65歳まで希望者全員を雇用しています。しかし、活用方針をみると高齢社員を「現役社員・定年前と同様に活用する」のか、あるいは「定年前とは異なる活用をする」のか、大きくこの2タイプに分かれます。多くの会社では後者を選択します。本来であれば、仕事や役割を社員の能力や希望に応じて個別に決めて活用する、そういう方法がとれればよいのですが、雇用人数が増えてくると、個別対応では手間ひまがかかってしまいます。そこで「定年後の働き方はそれまでとは少し違いますよ」、という方針で活用し、定年前の人事制度を変更することなく、「まずは65歳まで雇用を確保しましょう」、といった全員一律型の活用が、これまでは多かったわけです。しかし、この全員一律型にはいろいろな問題があります。そこで、高齢者雇用の先進企業では、仕事や役割に応じて人事制度をタイプ分けしたり、定年前とは異なる人事制度とするものの、高齢社員の働きに応じた報酬を支払う仕組みを導入する、といった活用を選択するようになっています。人事管理の整備が高齢者活用につながる高齢社員の活用課題を解決するうえで忘れてはいけない視点は、会社のパフォーマンスが向上する人事管理制度を整えていく、ということです。高齢者雇用においてポイントになるのは、高齢社員のモチベーションと生産性向上、ともに働く若年社員のモチベーション、それから人件費︵コスト︶です。先進企業が実際にどのように取り組んでいるのか、これまでの研究でわかっていることをお話しします。高齢社員の人事戦略と人事管理―戦力化に向けた仕事・賃金・キャリア―千葉経済大学 経済学部 経営学科 准教授 藤ふじ波なみ 美み帆ほ講 演東京会 場

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