エルダー2020年3月号
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2020.316高齢者が活き活き働ける人事制度を考える165歳以降も、現役時代と変わらぬ気概で働き続けるには、高齢者雇用(60歳以降を「高齢者」という)の仕組みを整備する必要があります。この考えに基づき、60代の「人事賃金制度」と「キャリア管理」に焦点を絞り、高齢者が活躍中の企業の事例報告をもとに議論することとしました。(1)登壇企業の特徴両社とも、60歳の定年以降は、現役の人事制度とは異なる処遇で再雇用を行う「一国二制度」方式です。定年後は、会社が期待する役割・仕事の内容に基づき処遇します。高齢者は、意欲と能力を発揮して、成果を上げることが求められます。会社は毎年人事評価を行い、65歳まで契約を更新します。結果次第で報酬が上下することになります。高い意欲と成果を継続すれば、65歳以降も働ける点が共通しています。(2)人事部門担当者へのメッセージ就業者の5人に1人が60歳以上という日本では、「高齢者雇用」は本気で取り組まなければならない最優先の課題です。しかしながら、高齢者のなかには、「会社が何とかしてくれる」という意識の人も少なくなく、人事部も、高齢者の活用には消極的です。今後は意欲と能力を兼ね備えた高齢者が活き活きと働けるように、真剣に60歳以降の労働者を支援する人事制度を考え、ていねいに対応しなければならないと考えます。高齢者雇用の対応策(人事賃金制度の観点から)2(1)働きに見合った報酬制度の整備再雇用制度を導入した多くの企業で、当初「在職老齢年金」や「高年齢雇用継続給付」の受給を見込んだ給与額の設定を行いました。60歳が通過点となった今日、給与水準が見直されることの合理性を理解してもらわなければ、高齢者の戦力化はかないません。今回提案するのは、「仕事」を処遇の基準とする「職務等級制度」です。「仕事」基準とは、その「仕事」に対して、会社がどれだけの報酬を支払えるか、ということです。「仕事」が報酬の決定要因であることに異論はないと思います。特に、仕事の領域と成果が明確な高齢者には、合理性が高いといえます。「職務等級制度」では、各人の職務を評価し格づけを行います。評価結果を点数化し、点数を括くくって等級を定める方法が一般的です(「要素別点数法」※の職務評価の仕組みを厚生労働省のHPからダウンロードできます〈図表〉)。評価結果に基づく報酬は、会社が決めることですが、現役社員と比べて「期待度」や「人材活用の方法」が変更になることをていねいに説明し、理解を得る必要があります。また高齢者に代わる人材を外部労働市場から採用すると報酬はどれくらいになるか、という視点も合理性を持たせるうえで有効です。(2)職務等級制度運用の課題●格づけの問題点と対応策職務評価は、異なる職種、例えば営業と経理の仕事を同じ評価項目で評価するため、点数に差が生じることがあります。会社方針・考え方を明確にし、定義やウェイトを自社流にアレンジし、部門間の目線合わせを行う必要があります。また仕事を評価するはずが「人」を評価し、過パネルディスカッション解 説パネルディスカッションの論点日本クッカリー株式会社 伊勢崎工場 管理部長 小西 敦あつ美み※ 要素別点数表……職務評価を項目ごとに点数化し比較する手法東京会 場

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