エルダー2020年3月号
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特集エルダー17人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチ去の功労や役職に引きずられ、職務価値が高くなることがあります。 高齢者の役割を明確にし、「職務評価委員会」などを設置し、評価の公正性を担保することが求められます。また契約更新の際に、人事評価を実施し処遇を見直すなどの方法で高齢者のモチベーション維持を図る必要があります。●格づけ基準の変更による社員の反応と対策日本の多くの企業は人事制度に「職能資格制度」を採用しています。「職能資格制度」は、職務遂行能力に基づき処遇を行うので、若手社員を定期的に採用し、長期的な視点で育成する企業に向いています。この制度で働いてきた人が、定年を機に、職務に基づき処遇するといわれても、理解は得られません。給与がダウンするとなれば、なおさらです。現役のころから、役割や職務を基準とする処遇を受けていれば、処遇への納得度は高まると考えます。ただし再雇用後の仕事が変わらない現状であれば、「仕事が変わらないのに、何で給与が下がるのだ」といわれることは想定しておく必要があります。「職務」が大きく変わらないとしても、「人材活用の方法」は変わっているはずです。「転勤がない」、「出張がない」、「会議に出席しない」など、広義での職務内容は変わっています。問題なのは、理解なく一方的に報酬を下げることです。今後の人事管理の方向性3上述の通り、若手社員を定期採用する企業では、「職能資格制度」が有効です。「職能資格制度」では、人事評価結果は、職能給の昇給や昇格に反映され、競争をうながしますが、若年期は処遇に大きな差はつきません。このいわば「見極め期間」を経て、企業は能力や貢献度に応じて役割を付与します。その後は、各人の価値観や働き方を考慮したうえで、「役割」や「仕事」に基づく処遇に切り替えるべきと考えます。これ以降は、自身の能力が最大限発揮できる仕事に就くことが、「生涯現役」を実現するうえで重要です。そのためには、「損害保険ジャパン日本興亜」さんと「ポーラ」さんのように、自身のキャリアに責任を持ち、活躍するフィールドは自ら開拓することが求められます。両社とも、キャリア研修とチャレンジする機会を提供し、高齢者一人ひとりと真しん摯しな対話を行っています。これに応える「高齢者」となるために、現役のときから、将来を見据えた能力開発、専門性の強化が求められます。「生涯現役」の実現には、高齢者の意識改革がともなうことは申し上げるまでもありません。図表 職務(役割)評価表出典:厚生労働省『職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル』(2019年3月)評価項目定義ウェイトスケールポイント①人材代替性採用や配置転換によって代わりの人材を探すのが難しい仕事122②革新性現在の方法とは全く異なる新しい方法が求められる仕事111③専門性仕事を進める上で特殊なスキルや技能が必要な仕事224④裁量性従業員の裁量に任せる仕事111⑤対人関係の複雑さ (部門外/社外)仕事を行う上で、社外の取引先や顧客、部門外との調整が多い仕事 224⑥対人関係の複雑さ (部門内)仕事を進める上で部門内の人材との調整が多い仕事133⑦問題解決の困難度職務に関する課題を調査・抽出し、解決につなげる仕事212⑧経営への影響度会社全体への業績に大きく影響する仕事11118【スケール】 ③「専門性」の例5…… 担当分野において高い専門性が必要とされ、かつその周辺分野においても高い専門性が必要とされる仕事4…… 担当分野において高い専門性が必要とされ、かつその周辺分野においても平均的な専門性が必要とされる仕事3……担当分野において高い専門性が必要とされる仕事2……担当分野において平均的な専門性が必要とされる仕事1……それほど専門性が必要とされない仕事ウェイト=評価項目の重要度ポイント=ウェイト×スケール評価項目=職務の構成要素ポイント総計=職務(役割)ポイント=職務の大きさ2

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