エルダー2020年3月号
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特集エルダー19人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチまず「知らせる」仕組みについてみてみましょう。期待役割の伝達状況については、7割強の企業が高齢社員に期待する役割を「知らせている」と考えており、7割強の高齢社員が「知らされている」と感じていました。企業と高齢社員双方が肯定的にとらえていることがわかりました。一方で、「期待する役割」の明確化の必要性を感じている企業は7割を超え、高齢社員も6割弱に達しています。次に、高齢社員に役割を「知らせる」プレイヤーとして、上司(管理職)の役割の発揮状況をみてみましょう。「重要な役割を果たしている」と「ある程度重要な役割を果たしている」の合計は、企業・高齢社員ともに7割強と、ともに高く評価しています。また、企業から管理職への高齢社員の活用に関する情報提供について、「行っている」と「ある程度行っている」の合計は、企業は6割、高齢社員では5割となっています。高齢社員のほうが、企業から管理職への情報提供が不足しているのではないか、と考えていることがわかりました。上司の負担を軽減する仕組みの整備が必要「知る」仕組みについてもみてみましょう。高齢社員の能力や適性について、企業は8割ほどが「把握している」と考えています。同様に、高齢社員も企業や上司が能力や適性を「把握している」、「ある程度把握している」と評価している合計が6割にのぼり、企業、高齢社員ともに肯定的にとらえていることがわかりました。では、高齢社員の能力や適性はどのように把握しているのでしょうか。企業は、「上司の評価」と「仕事の実績」を中心として、「契約更新時の面接で」や「自己申告」、「同僚の評価」で補完していると回答しています。一方で、高齢社員は企業よりも、「上司の評価」、「契約更新の面接で」、「自己申告」および「社内外の資格の取得状況」が活用されていないと考えており、特に「上司の評価」が十分ではないと考えている、という結果でした。考えなくてはならないことは、能力や適性を把握するためには上司が最も重要な存在なのですが、上司だけに依存し過ぎていないか、ということです。いま、職場の上司(管理職)は、たいへん多くのことを要求されています。上司だけに任せると、上司に多くの負担をかけることになります。そのため、補完的でもよいので上司以外が「知る」・「知らせる」仕組みを整備することが必要です。企業全体で上司の人事管理の負担をなるべく軽減する、そういう仕組みをつくっていくことも重要になってきているのではないかと思います。仕組みが整備されれば高齢社員・企業の満足度が高まるまた、今回の調査では「知る」・「知らせる」仕組みの整備状況と、「企業の高齢社員の働きぶりの満足度」との間に、非常に密接な関係があることがわかりました。仕組みが整備されることにより、高齢社員の満足度が高まり、それが高齢社員の高いパフォーマンスにつながり、企業の高齢社員の働きぶりに対する満足度が高まる、と考えられます。さらに、企業の70歳雇用を推進していくためにも、こうした仕組みを整備していく必要もあります。いまは少子高齢社会ですから、若者の人口がこれからますます減る状況にあります。私の勤めている大学も危機感を持っていますが、企業も若い人が採用できないとなったとき、どういう人に働いてもらうかを考えると、一つはその企業で長く働いてきた高齢社員に働いてもらう、となります。若年、中堅、高齢期という三つの時期によって、企業が期待する役割はおそらく異なります。そこで、高いパフォーマンス

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