エルダー2020年3月号
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2020.320を上げてもらうためには、「長年勤めている高齢社員だからもう何も伝えなくてもよい」というわけではなく、若年であろうと中堅、高齢期であろうと、期待役割を伝えていくことが必要となります。また、企業は働いている人たちの能力や意欲を知る必要があります。特に高齢期になると、個人差が出てきます。「知る」仕組みをつくるだけにとどまらず、より強化していく必要があるのです。その際、くり返しになりますが、職場の上司(管理職)に依存し過ぎない仕組みをつくっていくことが大切になります。高齢社員だけではなく現役世代にも目を向けた仕組みづくりを最後に、「知る」・「知らせる」仕組みを整備している企業について分析したところ、次の点が明らかになりました。一つめは、「知る」・「知らせる」仕組みを整備している企業は、高齢社員を活用するための方針を明確にし、それを現役社員に浸透させているということです。高齢社員は、企業の一員であることに変わりはありません。社内で方針を明確にし、高齢社員にも高いパフォーマンスをあげて働いてもらうことを現役社員にも伝え、浸透を図ることが重要です。二つめは、「知らせる」仕組みを整えた企業では、45歳以上の正社員に「60歳以降の職業生活を考えてもらう場」を多く用意するとともに、「60歳以降の職業生活の相談やアドバイス」の仕組みも整備していることです。つまり、45歳くらいになったら、60歳以降のことを考えてもらう機会をつくる、そういう仕組みやアドバイスをする体制の整備も重要であるということです。三つめは、「知る」仕組みを整備している企業は、これまでの職務経歴や教育訓練歴に関する情報を把握しているとともに、45歳以降の正社員に対し「60歳以降の職業生活の相談やアドバイス」を行うための仕組みを整備していることです。つまり、高齢期になると、期待する役割が変わる可能性が高いので、45歳くらいになったら、企業としては「知る」仕組みを用意するとともに、アドバイスをしていくことが大事になるということです。このときにアドバイスをするのは、上司が中心になりますが、上司だけに依存せず、人事部など、上司以外のだれかが45歳以降の社員に対して、相談やアドバイスができる仕組みを整備していくことも大事になります。本日の話のまとめとして、三つのポイントを整理しました(図表)。これらを整備していくと、高齢社員を含めた社員の戦力化を図ることができるとともに、企業として高いパフォーマンスをあげていくことができるのではないかと思います。図表 70歳雇用を推進していくためには⒈⒉⒊高齢社員を活用するという方針を明確にし、それを現役社員のなかに浸透させることが重要である。⒈を基本にしたうえで、高齢社員を対象にした「知る」・「知らせる」仕組みを整備する。現役正社員(特に45歳以降)に対する「60歳以降に期待する役割を知らせる」仕組み、現役正社員の「能力・意欲を知る」仕組み、現役正社員に対する「60歳以降の働き方を相談・アドバイスする」仕組みを整備していくことが必要である。

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