エルダー2020年3月号
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特集エルダー25人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチ教育されているのでしょうか。玉置 それぞれの現場に任せているというのが現状です。職制である主任、係長に上がれる者はひと握りです。また、転勤もありませんから、特定の年齢層が集中している工場もあります。そういうなかで、特に、高齢社員のモチベーションを維持するというのは、むずかしい問題だと感じています。 大木先生の講演のなかで、「期待する役割をきちんと伝えることが大事」というお話があり、本当にその通りだと思いました。 当社では定年延長にあたり、労使共催で研修を実施しました。57歳から59歳の組合員を対象にしたものです。定年延長によって、定年のゴールが直前で5年先に延びてしまった、という社員層です。1泊2日の日程で温泉に行き、本人たちには内緒で、上司からの期待を書いたレターと、同僚からの応援レターを用意して、その場で渡しました。サプライズでしたので、涙ぐんでいる社員もいました。大半の社員が、ずっと同じ仕事に就いていますが、上司からの具体的な評価や「がんばれ」といったメッセージ、同僚からの「お手本にしています」といった言葉が書かれており、これによって、研修参加者のやる気も上がったと思います。 当時、60歳前後でいかにモチベーションと能力を維持してもらうかを考え、あの手この手で取り組んだことですが、大木先生のお話と符ふ合ごうすると思い出しながら、期待を伝えることの重要性を再認識することができました。処遇のバランスについて大木 次に、処遇についてうかがいます。先ほども少しうかがいましたが、今後は同一労働同一賃金への対応という問題が出てきます。正社員と契約社員の人たちとの違いは、例えば異動の有無が大きいと思いますが、異動するということによりどれだけ処遇の差をつけていくのか。高齢社員だけの話ではないのですが、松室さんの考えをお話ししていただけますでしょうか。松室 労働判例を見ていますと、いわゆる賃金格差について、「合理的な根拠を述べよ」とあります。いまご指摘にありましたように、一つは「広域配転義務」の有無、そしてもう一つが「仕事の中身」です。管理職を委ねているか、特にマネージメントの管理職を委ねるかどうかということが大きな要素かと思いますが、この二つの要素が合理的な格差の理由なのだと思います。人事管理のなかで、これらを具体的に示していくことが人事の仕事だと感じています。大木 60代前半の再雇用者の処遇と、契約社員の処遇のバランスはどうされていますか。松室 当社の再雇用コースの「レギュラーコース」につきましては、契約社員との間には賃金格差のほとんどない状態と理解していただければと思います。一方で、専門嘱託員コース、スーパーセールスコース、技術・技能コースといった特定のコースについては差をつけているという状況です。大木 レンゴーさんは、65歳に定年延長をされたときに、総額人件費の問題はどのように調整をされたのかお聞きしたいと思います。定年延長については、総額人件費の問題があって悩まれている会社が多いと思います。お話しできる松室伸生氏 (株式会社髙島屋 人事政策 兼 人事・採用育成担当部長)

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