エルダー2020年3月号
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高齢者に聞くエルダー33思いでこの道を歩き続けてきました。横浜総合研究所の研究計画室長となったころから管理部門に移り、その後いったん退職の形を取ってから現在の会社に迎えてもらい、調査コンサルティングの仕事に就きました。その後常務を拝命し、64歳で役員定年を迎え、現役に戻って今日に至っています。三菱ケミカルリサーチは、私が新卒で入社した三菱化成特許部の情報調査部門から独立して設立されました。合併や社名変更など目まぐるしく変容しながら、調査コンサルティング企業として40年以上の実績を誇ります。現在、私は週の半分を本社で過ごし、もう半分は横浜センターに通っています。「研究所」から「センター」へと名称は変わりましたが、青春時代を過ごした同じ場所でまた働けるのは幸せなことです。三菱ケミカルリサーチは、関連会社で研究開発やビジネスの最前線で従事した人材を、調査コンサルティング部門などで活用している。生涯現役を応援する土壌がここにある。研究開発の経験を活かして本社での仕事は基本的に「コントラクトリサーチ」という分野で、官公庁などからの受注に際してのサポート業務です。各部から出された提案書をチェックして修正をかけ、よりよい形にし、受注につなげていくという役割をになっています。氾濫する情報のなかから有益な情報を迅速に抽出するとともに顧客の要望を的確に把握し、助言を行うことが私の仕事です。一方、横浜センターでは主として研究者のサポート業務を担当しています。現代では、例えばある技術テーマについて検索すると、千件以上がヒットしてくることもあります。そこで、研究の効率化のために情報を絞り込んで提供していくのです。対応するScience & Innovation Centerには若い技術者が多く、話をする機会があるたびに、若いときこそ発想の転換が大切であることをくり返し伝えています。研究者として長く現場に立ってきましたので、本社でもセンターでも、これまで蓄積してきた知識が活かされ、技術的な経験も役立っています。また、経営企画室で学んだ事業戦略の立案や業界の動向の把握などに関する経験もいまの業務に活かされています。思えば、役に立たない経験などないのかもしれません。知識欲を支えに生涯現役の道を再雇用から早いもので9年が経過し、1年ごとに更新しており、勤務時間はほかの正社員と同様、9時から5時45分までで、週休2日です。現在趣味といえるのはゴルフ(テレビ視聴と実践)で、昔はそこそこのスコアで回っていたのですが、年を取ると段々下手になってきました。大学時代にやっていたテニスもしばらく続けていましたが、管理部門に移ったころから忙しくなり、足が遠のいてしまいました。そんななか、運動不足になりがちなので、1日7000歩を歩くようにしています。本当は1万歩を目ざせばよいのでしょうが、少しハードルを下げた方が継続できると思いました。これも私流の発想の転換です。本社には客員研究員といわれる方たちがいて、私より高齢な方も多いのですが、共通しているのは旺盛な知識欲でしょうか。私たちの仕事は、特許や文献を調べて読み込み、市場調査も必要ですから、常に情勢の変化を敏感にとらえることを自らに課しています。最近は仕事がデスクワークにかぎられるため、ときどき「研究したい」と思うことがあります。役職者であったころ、やはり夜遅くに実験したことなどが懐かしく思い出されます。くり返しになりますが、化学は本来、人間が豊かに生きることを支えるために存在すると私は確信しています。化学とともに生きてきた誇りを胸に、これからも化学に寄り添い、微力でもだれかの役に立てるよう、生涯現役の道をしっかり歩いていこうと思います。

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