エルダー2020年3月号
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2020.338「働く」=社会参加の形の一つAI・ICTがシニアの社会参加を活性化ひとりの一生が100年もの長さになってきたといわれる今日、高齢期の時間をどのように過ごしていくかを考えることは、生きるうえで一大テーマとなります。退職後の心身の健康維持向上には、社会とのつながりを持ち続けることが鍵となっています。「働く」ということは、わかりやすい深いレベルでの社会参加の形です。これまでの連載で取り上げてきたように、インターネットを中心にした情報通信技術の発達が、シェアリングエコノミーという新しい柔軟な働き方を生み出し、広がり始めています。仕事のデジタル化もますます加速していくと同時に、ロボット技術とVR技術が発展していくことで、従来のテレワークでできる仕事の領域が急速に拡大されていく可能性も見えてきました。一人ひとりが心身のコンディションや生活する環境に合わせて、無理なく不安なく働けるように、新しい柔軟な働き方を支援するツールは発展し続けるでしょう。当連載の第2回で紹介した、シニアの社会参加・就労を活性化するマッチングプラットフォーム「GジーバーBER」も、そのようなツールの一つとして研究開発を進めています。これまで実証実験として、「一般社団法人セカンドライフファクトリー(千葉県柏市)」では4年にわたって運用を続けており、熊本県では自治体と連携した広域展開を始めています。柏市や熊本県での運用がきっかけとなって、現在多くの自治体やシニアコミュニティ、民間企業から、地域でのGBERの展開を希望する問合せが集まってきています。教育研究活動の一環で行っているため、なかなかみなさまの要望にお応えできていない面がありますが、これからはシニア就労とGBERの活用に関心のある自治体、シニアコミュニティ、企業とコンソーシアム※2を形成し、GBERを社会実装するスタートアップを立ち上げることも考えていく必要があると感じています。多様化するシニアのニーズ単一のコミュニティでは対応できない30名以上のメンバーを抱えて、仕事などの地域活動への参加に積極的に取り組んでいるコミュニティは、活動を活性化させるツールとし※1 AI・ICT……AI(Artificial Intelligence)は人工知能、ICT(Information and Communication Technology)は情報や通信に関連する科学技術の総称※2 コンソーシアム……同じ目的を持つ、二つ以上の個人や企業、団体からなる団体―高齢者から始まる働き方改革― 生涯現役時代を迎え、就業を希望する高齢者は、今後ますます増えていくことが予想されます。そんな高齢者の就業を支援するうえで期待が集まるのが「AI・ICT」※1。AI・ICTの活用で、高齢者が持つ知識や技術、経験を効果的に活用できる働き方が実現すれば、現役世代の負担軽減につながります。それが、〝高齢者から始まる働き方改革〞の姿です。東京大学 先端科学技術研究センター 講師 檜ひ山やま 敦あつしで働き方が変わる第5回ジョブの開拓と就労観の転換

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