エルダー2020年3月号
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2020.340技能や経験の獲得への関心」などのキャリア志向が高い人材ほど、副業・複業・兼業に対する関心が高く、フレックスタイム制度・育児休業・テレワークなどの柔軟な働き方を支援する仕組みを「利用したい」、「利用したかった」という回答が多くなりました。逆にキャリア志向が低い人材は「利用したくない」、「知らない」という回答が多くなりました(図表)。また、現在正社員である人、役職についている人、キャリア志向が高い人ほど「可能な限り正社員が良い」という考えに賛同し、仕事に対する自信・積極性が高い人ほど反対する有意な関連が見られました。さらに、小学生以下の子どもがいる人、健康に不安がある人ほど、「職務単位での働き方」や「主体的なキャリア形成」に消極的であることがわかりました。「非正規雇用」と呼ばれている制度が、自分の経験やスキルに自信があって、積極的にキャリアを開拓していきたい人材の活躍の場を広げるためのものとして紹介されたなら、労働格差は拡大する方向ではなく是正され、生産性は高まったのかもしれません。現実には、職務給を導入することなく職位給を維持したまま非正規雇用が拡大し、正社員との間の労働格差が広がってしまいました。本来は無理なく仕事とのつながりを維持したいと考えている人ほど、そのための柔軟な働き方を支援する制度の情報を知ることができにくいこと、労働格差のなかで自己を守るために既存の就労観に固執してしまう傾向に陥りやすいことが示唆されています。働くシニアのキャリア構築に向け日本式就労観からの転換を話をシニア就労に戻すと、よく耳にする「役職定年」や「定年延長」、「再雇用」というシステムは、既存の働き方や給与体系にメスを入れることなく、従来の就労観を維持する方向で考えられたものだといえます。リクルートワークス研究所が注意喚起した「次世代シニア問題」という言葉があります※4。現在のシニアは、日本が世界第2位の経済大国である時代にキャリアを形成し、いまの若い世代よりも多くの貯蓄を形成することができました。昨年の金融庁の報告書から老後30年の必要資金2000万円問題がメディアを賑わすようになりました。現在保有している貯蓄から、さらに追加で2000万円の資産を形成する必要があると解釈している人もいるでしょう。2015(平成27)年の総務省の家計調査によると、60歳以上の平均貯蓄額は2396万円で中央値は1592万円となっています。ということは、貯蓄額の中央値で考えると65歳で定年退職してから30年生きるとした場合、30年間で400万円程度稼ぐ必要が出てくることになります。つまり1カ月あたり1・1万円の収入を得ることで、老後資金2000万円を準備することがで※4 リクルートワークス研究所 2014年度『Works Report』より0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%364932102055281511151241323512816455024172249281976462814育児休業介護休暇病気療養の休暇短時間勤務制度フレックスタイム制度テレワーク副業・複業・兼業現在利用している過去利用した利用したい(したかった)利用したい(したかった)と思わない制度を知らない資料出典: 産業・組織心理学会第35回全国大会講演資料(2019年)「多様な働き方への態度とその関連要因」菅原育子、今城志保、檜山敦、秋山弘子図表 多様な働き方を支援する制度の利用経験・利用希望

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