エルダー2020年3月号
46/68

労働協約による変更4労働組合法第16条は、「労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となつた部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする」と定め、労働条件の最低基準となることを定め、労働契約に優先する効力を持つと解釈されています。さらに、同法第17条において、「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする」とも定め、労働組合の組合員以外への法的拘束力も肯定しており、労働協約を変更することで、多数の労働者との間で労働条件を変更することも可能となっています。労働協約は、労働組合との合意により成立するものであり、労使間の交渉を経て、条件の調整などを重ねながら最終的な労働協約として整理されるという過程を経ることが多く、当該労使間の交渉が行われることが重視され、就業規則と比較すると、変更の有効性は認められやすい傾向にあると考えられています。試用期間の法的性質1多くの企業においては、採用の際に試用期間を設けることが一般的です。期間としては、3カ月から6カ月程度が多いかと思われますが、試用期間中に十分な能力がない場合には、本採用を拒否して、労働契約を終了させる場合があります。この試用期間の法的性質については、「試用契約の性質をどう判断するかについては、就業規則の規定の文言のみならず、当該企業内において試用契約の下に雇傭された者に対する処遇の実情、とくに本採用との関係における取扱についての事実上の慣行のいかんをも重視すべきもの」として、事案ごとに個別に判断される余地は残しつつも、「上告人と被上告人との間に締結された試用期間を三か月とする雇傭契約の性質につき、上告人において試用期間中に被上告人が管理職要員として不適格であると認めたときは、それだけの理由で雇傭を解約しうるという解約権留保の特約のある雇傭契約」という認定を是認しています(最高裁昭和48年12月12日判決、三菱樹脂本採用拒否事件)。この説示は、たとえ試用期間中であったとしても雇用契約は成立していることを前提にしているため、本採用の拒否は、解雇に該当試用期間の満了による終了においても、解雇権濫用に該当する可能性があります。採用前に判明していなかった事情であるか、試用期間中に解消することができない能力不足であったのかなどを考慮のうえ、本採用拒否の有効性が判断されることになります。なお、試用期間を延長することで対応する方法も考えられますが、その場合就業規則の規定に延長を許容する内容が含まれている必要があります。A2020.344試用期間を経て本採用を見送る場合に問題はありますか求人活動を経て、採用に至ったのですが、入社してから協調性のなさ、業務に関する報告が不十分であること、業務のスピードが一般的な採用者と比べても大きく劣っているなど、採用時にはわからなかった能力不足が明らかになってきました。採用にあたっては、3カ月の試用期間を設けているので、試用期間満了をもって契約を終了しようと思っているのですが、問題があるでしょうか。Q2

元のページ  ../index.html#46

このブックを見る