エルダー2020年3月号
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脳力アップトレーニング!働くための篠原菊紀(しのはら・きくのり)1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。2020.364目標4問5分第34回次の図形を一筆書きで描いてみてください。※回答は一通りではない場合もあります。一筆書き 認知症や軽度認知障害では、記憶力の低下が起こることがよく知られています。記憶に関係する海馬が、アミロイドβベータなどによってその働きを低下させるからです。一方、海馬は空間認知にかかわることも知られています。空間認知課題の問題を解いて、がっちり鍛えましょう。目で見た情報は後頭葉でキャッチされ、空間認知にかかわる頭頂葉に送られて処理されます。一筆書きで図形を描こうすると、後頭葉と頭頂葉の働きにより、図形の全体像を把握したうえで、どのようになぞれば一筆で描けるのかを考えます。そのため、視覚処理にかかわる後頭葉や頭頂葉だけでなく、作業プランを立てることにかかわる前頭葉も大いに活性化します。さらに、ペンで紙に図形を描くことで、プランに沿って手を動かすように指令を出すことが必要となり、それにかかわる運動野もフル回転するため、「一筆書き」は脳をまんべんなく使うことができる、実によい脳トレといえます。また、図形を描くときに必要な空間認知力は、ものごとを俯ふ瞰かんでとらえる力や自分自身を客観的に認知する能力(メタ認知)などともつながっています。メタ認知能力は、人とコミュニケーションをとったり、仕事や家事などの目標を定めたりするときに必要となります。空間認知力を鍛える「一筆書き」で、メタ認知能力も高めていきましょう。空間認知力を鍛える「一筆書き」❶❷❸❹【問題の答え】❶❷❸❹※ 篠原菊紀さんには、今月号の「リーダーズトーク」(1頁~)にご登場いただいています。

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