エルダー2020年4月号
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2020.410「雇用の安定性」、「コンプライアンスへの対応」など、働きやすさや安心感につながる項目において差が大きい傾向があります。また、項目間で比較すると、「キャリア設計の相談体制」や「人材育成方針」といったキャリア支援策に対する評価がいずれのグループでも低くなっています。前述のように、個人の状況への満足度において、研修や能力開発の機会についてはほかの項目と比較して低くなっていましたが、職場の状況への評価においても、人材育成やキャリア支援に関連する人事施策について全般的に低水準にとどまっており、多くの中高年期の女性社員にとって前向きな実感が得られにくい状況にあることがうかがえます。女性活躍推進法の施行なども背景に、女性の戦力化に向けた企業の取組みが進んでいますが、多くの場合、中心となっているのは若手の育成や育児などとの両立支援策です。これらの「定番」である施策に加えて、その先の高齢期に向けた能力開発のあり方についても、働く側のニーズを認識する必要がありそうです。先輩社員のあり方とのかかわり次に、制度や労働条件とは別の面から、職場の人的環境とのかかわりについて見ていきましょう。ここでは、先輩女性社員の高齢期の状況と、高齢社員の働きぶりに対する認識という二つの面に注目します。(1)先輩女性社員の道筋はトレースされるのか先輩女性社員の働き方が後輩のロールモデルとなり、高齢期の身の振り方についても先例が暗黙の基準となっている職場は少なくありません。そこで、勤務先企業で定年後も働き続ける女性正社員がいるかどうかをたずねたところ、定着意識別グループ間で顕著な差がありました。図表4に見るように、定着コア層では「女性の正社員はほとんどが定年後も働いている」、現役定着層では「女性の正社員は定年で辞める人が多い」、流動層では「これまで定年に到達する年齢層の女性社員がいなかった」が最も多い回答となり、それぞれのグループの定着意識が先輩の状況をトレースするかのような結果となりました。先輩の動向や実績、そしてその背景にある企業風土が、現役の意識に影響を及ぼすことが感じられます。将来に向けて現役社員の定着意識を高めていくためには、まずは現に高齢期に到達する女性社員の定着が大切であるということがいえそうです。(2)現役が見る高齢社員の働きぶり次に、先輩高齢社員(男女を問わず)の働きぶりについての認識を見てみましょう。現役社員が高齢期も勤務先で働き続けたいという気持ちと周りの高齢社員に対する評価とは関連があるのでしょうか。職場の高齢社員に対し、「仕事ができる」や「経験や技術を伝えてくれる」など10項目について、図表4 勤務先企業の女性の定年到達状況※定年65歳までの企業勤務者への設問 n=定着コア層1016、現役定着層788、流動層14650102030405060708090100%定着コア層(定年後も継続)現役定着層(定年まで勤務)流動層(定年前離職、未定)女性の正社員は定年より前に辞める人が多いこれまで定年に到達する年齢層の女性社員がいなかった女性の正社員は定年で辞める人が多い女性の正社員はほとんどが定年後も働いているわからない17.021.220.915.912.315.420.524.520.314.621.612.131.525.027.3

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