エルダー2020年4月号
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2020.412うかがえます。このように、定年後の雇用に関して人事施策面で対応を図る場合、定着コア層のモチベーションをさらに高めるためには「働ける年齢の引き上げ」が、定年以降の継続雇用を選択する人材を増やすためには現役定着層が重視する「個人の働きやすさへの配慮」が、それぞれ効果的な施策となるのではないかと考えられます。図表は割愛しますが、高齢期に働く場合に重視したい条件や働き方についても、定着意識別グループによって異なる傾向が見られました。定着コア層では、「これまでに経験のある仕事内容であること」や「慣れた職場環境であること」などを重視し、働き方としてもフルタイム希望者の割合が高いなど、現役時代との継続性を望む人が多いのに対し、現役定着層では「休みが取りやすいこと」、「都合のよい時間や曜日に働けること」など労働時間の柔軟性を重視する傾向があります。働き方に多様な選択肢を示すことができれば、より多くのベテラン人材が企業に定着し高齢期にも力を発揮する可能性が高まりそうです。女性のエルダーキャリアの形成が重要な課題に本調査のデータからは、職業生活への満足度や勤務先への評価が高齢期も勤続したいという意欲に強く結びついていることがうかがえました。また、中高年期の女性正社員は、企業の人事施策のうち、キャリア相談の体制や人材育成方針、能力開発機会などに対する満足度が低いことも注目されます。定年や継続雇用年齢の引上げにより働く人にとってのゴールが先に進むなか、中高年期におけるキャリア支援の重要性への認識を高める必要がありそうです。さらに、職場の先輩女性の動向や高齢社員のあり方も現役社員の定着意識への影響が強いことがうかがえます。次に続く世代の高齢期に向けた意識を左右しかねないという観点からも、現在の高齢社員が活き活きと働ける人事管理や環境整備、さらに高齢社員から後輩へ向けたさまざまなメッセージの発信は重要だといえるでしょう。定着意識には生活設計や価値観など個人側のさまざまな要因も関連しており、人事管理や職場環境など企業側の条件だけで変化するものではありません。また、職業人生が延びるなか、一つの企業に長く定着することのほかに、能力を発揮できる機会が充実することも望まれます。しかし今後、正社員としてのキャリアを積んで定年を迎える女性社員が増加し、継続雇用者におけるウエイトも高まっていくことが予想され、多くの企業にとって女性のエルダーキャリアの形成が重要な課題となると考えられます。女性活躍推進に向けた人事施策においても、若手の育成や中堅層の両立支援にとどまらず、高齢期までをひと続きのものとした取組みが、これからますます必要とされるのではないでしょうか。図表6 高齢期に働く場合モチベーションアップにつながる会社の対応定着コア層(定年後も継続)現役定着層(定年まで勤務)流動層(定年前離職、未定)計(定年あり企業勤務女性社員) 定年年齢の引き上げ47.3 26.1 27.0 33.0 何らかの形で働ける年齢の上限引き上げ32.8 21.6 24.5 26.3 勤務時間や働き方の選択肢を増やす61.1 64.3 61.2 61.9 賃金の改善64.2 63.0 59.4 61.8 作業の軽減25.1 32.0 33.2 30.4 研修の充実7.5 7.1 7.3 7.3 経営者や管理職の意識改革21.6 24.6 23.8 23.3 若い社員の意識改革21.1 20.5 19.4 20.2 生活設計に関する相談や情報提供13.3 12.4 13.2 13.0 健康管理への支援35.9 38.7 36.6 36.9 介護と仕事の両立への支援34.6 38.1 34.1 35.2 n103480615203360(複数回答)

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