エルダー2020年4月号
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エルダー25FOOD日本史にみる長寿食食文化史研究家● 永山久夫ひじきは古代からの長寿食ひじきを食べると不老長寿ひじきはホンダワラ科の海藻で、日本では古くから「ひじきを食べると不老長寿」といわれ、日常的に食されてきました。縄文時代の貝塚からも出土していますし、戦国時代には煮しめて兵ひょう糧ろうとし、平和な江戸時代になると、さらに美味しくなるように工夫をこらしてお惣そう菜ざいとして人気となります。ひじきにかぎらず、昆布やワカメなど、日本人は世界一海藻を食べるというユニークな食文化を形成してきました。このため、日本人の腸は、海藻の食物繊維を好んで食べる細菌が古くから棲みつき、それが日本人の長寿につながっているという説もあります。現在でも、海藻や魚を日常的に食べている地方には、長生きする方が多いといわれています。まさに、「ひじきを食べると不老長寿」なのです。商人がひじきを食べる知恵ひじきは、煮たり蒸したりしたものを、干して保存し、使用するときに水でもどします。保存できることが、ひじきのお惣菜が各地に普及した大きな背景になっています。ひじきのお惣菜といったら、何といっても油揚げと甘辛く煮しめた一品でしょう。戦前、使用人の多い大阪の商家では、夕食のおかずに、ひじきと油揚げの煮ものが出されたそうです。粗末に見えますが、この組合せこそ、日本人の知恵。商人にとって、お客さまは神さまです。安心して、気持ちよく商品を買ってもらうためには、ニコニコした笑顔のサービスは欠かせません。そのための自然な笑顔を生み出すのが、カルシウム。「食べるトランキライザー(精神安定剤)」といわれるように、カルシウムを十分にとっていれば、気分に余裕が出て、笑顔も生まれます。干しひじき100g中には1400mgのカルシウムが含まれ、その含有量は海藻のなかでナンバーワン。腸活に欠かせない食物繊維もたっぷり。油揚げには物忘れを防ぐレシチンも含まれています。319

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