エルダー2020年4月号
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2020.42株式会社Next Story代表取締役 昭和女子大学現代ビジネス研究所 研究員西村美奈子さん任せようという企業も増えています。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数などを見ると、日本の男女共同参画の現状はほかの国々からかなり後れをとっていますが、それでも女性の労働力率のM字カーブは解消に向かっていますし、保育園不足問題に象徴されるように、保育園を利用して働く女性も増えています。社会的にも、企業レベルでも、両立支援や女性活躍推進のための制度が整備されてきたこともあり、女性が働きやすい環境整備は進んできたと思います。―働く女性自身の変化はいかがでしょうか。西村 私たちや、私たちの前の世代の女性たちが苦労して実現してきた環境を、あたり前のように享きょう受じゅできるようになったことはよいことです。ただ、ごく一部ですが、「育児中だから優遇されて当然」というような、既き得とく権けん益えきの意識を持つ人が摩擦を生む状況もあり、気になっています。 女性は男性に比べて、多様性の幅が広いで―男女雇用機会均等法(以下、「均等法」)が施行されて約35年。そのころに大学を卒業して就職した世代が、もうすぐ60歳の定年を迎えようとしています。この間、職場における女性の立場、役割は変わってきたでしょうか。西村 私が富士通に入社したのは1983年で、均等法が制定される少し前でした。大手企業のソフトウェア開発の世界は人手不足で、女性も多く採用していましたが、一般的には、当時は職場での女性は男性の補助的な役割にとどまっており、女性を定年まで活用したり、ましてや管理職に登用しようと考えたりする企業はほとんどありませんでした。そうしたなかでも私は技術者として採用されたので、基本的には男性と同じ仕事を任せられていました。ただ、均等法ができる前の時代でしたから、女性保護の観点から、女性は残業が2時間までと制限されていました。 そんな時代と比べれば、いまは多くの企業が女性を戦力としてとらえており、管理職をすね。例えば、男性と同じように働きたい人もいれば、かつての一般職のように補助的な仕事のままでいいという人もいます。マミートラック(出産を終えた女性が昇進できないキャリアコースに位置づけられること)に悩む人もいれば、昇進を望まない人もいる。企業に必要なのは、女性を一律に扱うのではなく、本人の希望に柔軟に対応する姿勢です。 私は、次男が1歳になったとき、海外出張を打診されました。会社が、「小さな子がいるから出張できないだろう」と決めつけるのではなく、私に選択を委ねてくれたことは、とてもありがたかったです。そのおかげで私が出張で不在の間は、家族や友人の協力を得て、支障なく子どもたちの世話を行える態勢を整えることができました。―西村さんは、60歳の定年を前に早期退職され、女性のセカンドキャリアを支援する会社を立ち上げられました。それが西村さんご自身のセカンドキャリアでもあるわけですが、いきさつを教えてください。西村 それまで私は、ソフトウェア開発、海外顧客向けの研修インストラクター、海外を含めた展示会担当、お客さまのウェブサイトやeラーニングコンテンツの制作、社内の情均等法施行後に就職した最初の女性たちが60歳定年を迎えようとしている

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