エルダー2020年4月号
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談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」と「その他の雇用管理上必要な措置」を準備することが必要となります。また、同条第2項においては、「事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」とも定められており、セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントと同様に、不利益取扱いの禁止も定められました。「当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置」を講じることについて、同様の規定が男女雇用機会均等法11条や育児・介護休業法25条にも定められており、これで、主なハラスメントの防止措置に関する規定がそろったことになります。ハラスメント防止措置違反に対する制裁について2パワーハラスメントの防止措置の整備状況に関しては、厚生労働大臣が必要な事項について報告を求めることができ(改正労働施策総合推進法36条第1項)、当該報告に応じなかった場合や、虚偽の報告をした場合には20万円以下の罰金に処するものとされています。しかしながら、近年では、制裁としては罰金よりも、違反者に対する是正勧告に従わなかった場合に行われる企業名公表の方が重大かもしれません(同法33条第2項)。企業名公表の制度は、セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントに関しても採用されており(男女雇用機会均等法30条及び育児・介護休業法56条の2)、違反者に対する行政上の制裁として確立してきています。企業名公表は、企業が労働関連法を順守していないことを世間に知らしめることになるため、最も影響を受けるのは求人活動であると考えられます。労働関連法を順守していないことは、採用に大きな悪影響を与えることにつながるため、事業活動に支障が生じるおそれがあります。ハラスメント防止指針について3各種ハラスメントの防止指針は、令和2年厚生労働省告示第5号および第6号として定められました。細かい点は、それぞれのハラスメントの特性に応じて異なる点もありますが、事業主の責務として求められる内容は共通しています。まず、①事業主の方針の明確化とその周知・啓発があげられています。基本的には、社内におけるハラスメントを禁止すること、違反に対して厳正に対処する旨のトップメッセージを発信し、社内報など社内での公表などの措置により周知することが考えられます。また、就業規則における服務規律や懲戒処分の規定を整備しておくこともあわせて実施する必要があります。次に、②相談や苦情に対応する体制の整備が必要です。実際には相談窓口を設置し、窓口の利用に関して周知することになるでしょう。また、相談対応を行う人員についても研修が必要ですが、負担が大きい場合には、例えば、法律事務所などの外部窓口へ委託する方法も採用できます。さらに、③発覚した後の迅速かつ適切な対応が必要です。なかでも、迅速さをないがしろにすると被害の拡大につながるため注意が必要です。適切な対応とは、⑴事実関係の正確な把握、⑵被害者への配慮が行われること、⑶事実確認後必要に応じて行為者に対する処分などの措置を実施すること、⑷組織内における再発防止策を実施することなどがその内容となっています。最後に、④各措置においてプライバシーへの配慮が行き届いていることが必要です。相談者や行為者の情報はプライバシーとして保護されるべき対象と考えられています。このことは、正確な事実関係を把握するまで、加害者と指摘された労働者も、実際に加害行為を行ったのか否か不明であることを前提にしなければならないということでもあります。また、相談者の情報を開示することがハラスメントをエスカレートさせるおそれもあるこエルダー41知っておきたい労働法AA&&Q

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