エルダー2020年4月号
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とから、状況によっては相談者を具体的に開示することなく対応するケースも生じることが想定されます。望ましい対応について4指針には、順守すべき内容に加えて、望ましい対応もあわせて示されています。一つは、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメント対応の窓口を一元化することです。ほかにも、ハラスメント予防のために、感情をコントロールする手法やコミュニケーションスキルアップの研修を行うこと、マネジメントや指導についての研修を実施することなどもあげられています。また、雇用という関係の外にある場面についても言及されており、インターンシップなど、まだ雇用に至っていない人間関係や、業務委託関係にある個人事業主などもハラスメントが望ましくないことは前提とされています。さらには、顧客などからの著しい迷惑行為や、取引先であるほかの事業主との関係にまで言及されており、いわゆるカスタマーハラスメントなどまで想定された内容となっています。以上の、望ましい内容については、法令上の拘束力まで及ぼす趣旨ではないと考えられますが、労働環境の整備にあたっては重要な視点であると思われます。変形労働時間制の種類1労働時間制度は、1日8時間以内、かつ、1週間40時間以内とすることが原則とされており、これを超えるためには、36サブロク協定の締結が必要であり(労働基準法36条)、法定の労働時間を超えた場合には時間外割増賃金を支払う義務が使用者に生じます。しかしながら、原則通りのルールのみでは、例えば、週に1日集中して業務にあたった方が労働者にとっても効率のよい業務があったとしても、1日12時間労働したうえで、翌日は午後出社して4時間勤務をした場合(2日間で16時間労働)でも、4時間分の時間外割増賃金が発生することになります。とすると、時間外割増賃金が発生することを回避したい使用者からすれば、8時間勤務の維持を望むことから、労働者にとっては都合のよい働き方を選択しづらくなってしまいます。このような場合の例外的な制度として、変形労働時間制が用意されています。例えば、前記の例示のようなケースであれば、1カ月単位の変形労働時間制を採用することで、時間外労働時間を抑制することが可能です。すなわち、一定の期間を単位として1カ月以内の単位の変形労働時間制と、1年以内の単位の変形労働時間制があります。それぞれ、事業内容などに応じて使い分けることで、労働時間を柔軟化することが可能です。導入には、1カ月単位の変形労働時間制の場合は就業規則または労使協定の締結、1年単位の変形労働時間制の場合は労使協定の締結が必要です。なお、締結した労使協定は労働基準監督署へ届け出ることになります。対象期間、労働日、労働時間を特定して定めておかなければ、変形労働時間制の適用が否定されることがあるため注意が必要です。A2020.442変形労働時間制とはどのような制度なのか知りたい働き方改革により労働時間の抑制やフレキシブルな労働時間制度の採用が望まれているようですが、変形労働時間制とはどのような制度なのでしょうか。導入のためには、どのような手続きが必要なのでしょうか。Q2

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