エルダー2020年4月号
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定めることで、その範囲内において、1日または1週単位における労働時間の制限が緩和されることで、時間外労働としては扱われなくなります。導入の手続きについて21カ月単位の変形労働時間制を導入する場合は、就業規則に規定を設けるか、過半数以上の労働者から選出した労働者代表(過半数以上の労働者で組成する労働組合でもかまいません。以下、「過半数代表者」)との間で締結する労使協定によることもできます。一方で、1年単位の変形労働時間制を導入する場合は、過半数代表者との間で労使協定を締結することが必須です。なお、この場合でも、始業時間と終業時間については、就業規則に規定しておく必要があります。いずれの場合であっても、労使協定を締結した場合には、労働基準監督署へ届け出ることになります。変形労働時間制を導入するためには、対象労働者、対象期間と起算日、労働日と労働日ごとの労働時間、労使協定の有効期間などを定める必要があります。対象とする期間や労働日、労働時間の特定について3変形労働時間制を導入するための要件のなかでも、注意が必要とされるのが、対象期間と起算日や労働日の所定労働時間の特定です。過去にこの点が争点となった事件で、就業規則等において、「業務の都合により四週間ないし一箇月を通じ、一週平均三八時間以内の範囲内で就業させることがある」旨が定められていた事案において、「一箇月単位の変形労働時間制…(略)…は、法定労働時間の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において一週の法定労働時間を、又は特定された日において一日の法定労働時間を超えて労働させることができるというものであり、この規定が適用されるためには、単位期間内の各週、各日の所定労働時間を就業規則において特定する必要があるものと解される」として、各週、各日の所定労働時間を特定されていないことを理由に、変形労働時間制の適用が否定されました(最高裁平成14年2月28日判決〈大星ビル管理事件・上告審〉)。対象期間と起算日、所定労働時間については、変形労働時間制の単位期間が始まる前に、シフト表やカレンダーなどで指定されて特定することが一般的に行われていますが、これらは変形労働時間制適用の前提となるものであるため、非常に重要であるということは認識しておくべきでしょう。労働日の特定については、1カ月単位の変形労働時間制の場合は、対象期間の前日までに、一方、1年単位の変形労働時間制の場合は、対象期間を1カ月以上の期間に区分して、当該区分した期間の初日から30日以上前までに、過半数代表者と同意して特定する必要があるとされています。使い分けの判断について41カ月単位の変形労働時間制は、1カ月のなかで、繁はん閑かんの差があるような企業においては、メリハリのある労働時間の配分のために採用する余地があります。一方で、1年単位の変形労働時間制については、1年間を通じた、労働時間の調整も一定程度可能となります。季節ごとに繁閑差があるような企業において採用することが適切といえるでしょう。1年単位の変形労働時間制において、労働時間の調整が一定程度にとどまる理由は、1日単位の労働時間は最大10時間、1週間単位の労働時間は最大52時間とされ、3カ月を超える単位としている場合には、週の労働時間が48時間を超える週を連続させるのは3週以下、3カ月ごとの各期間において週の労働時間が48時間を超える週は3回以下といった上限規制があるため、純粋に年間の労働時間全体で調整できるわけではないからです。なお、対象期間の特定などがむずかしい場合には、フレックスタイム制の採用を検討することになります。エルダー43知っておきたい労働法AA&&Q

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