エルダー2020年4月号
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2020.444「健康度」の表し方私たちが自分の健康の度合いを表現するときは「〇〇病の疑いが少ないから(健康に近い)」という意味の表現をすることが多いと思います。例えば、「血液がさらさらである」は、動脈硬化や心しん筋きん梗こう塞そく、脳卒中などのリスクが低いので「健康に近い」ことを意味しますし、「空腹時血糖値が高くなく、食後の血糖値の上昇が比較的短時間で下がる」は、糖尿病になる兆候が少ないので「健康に近い」という意味になるでしょう。最近話題となっている、「ロコモーティブ症候群※1」や「サルコペニア※2」の疑いが小さければ、「筋力や筋肉量が保たれている」とか、「関節の可動域に問題ない」という望ましい健康状態にあるという意味となります。一方で、みなさんの健康は、糖尿病や動脈硬化症などの生活習慣病、がん、認知症、サルコペニア、肝臓疾患、腎臓疾患、循環器疾患などの疾病ごとに、医学の専門家が健康リスクを評価しています。つまり、疾病ごとのリスク評価は存在します。しかし、検査正常値域の範囲にある人の健康の度合いを総体として表す指標は、まだ確立されていません。こうした指標は、高齢になって無理なく働き続けるための目安にもなるでしょう。筆者は、このような指標を「総合的健康度ポジショニングマップ」(図表)と呼んでいます。読者のなかには、定期健康診断の結果によって、働く人の健康度がわかるのではないかという人がいると思います。職場の健康診断は、主要な疾患※1 ロコモーティブ症候群……身体活動をになう筋・骨格・神経系などの運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態になること※2 サルコペニア……筋肉量が減少して筋力低下や身体機能低下をきたした状態最終回「健康関数」と「総合的健康度ポジショニングマップ」国立研究開発法人理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム プログラムディレクター 渡わた辺なべ恭やす良よし 高齢者が毎日イキイキと働くためには、「疲労回復」の視点を持つことも重要になります。この連載では、「疲労回復」をキーワードに、“身体と心の疲労回復”のために効果的な手法を科学的な根拠にもとづき紹介します。科学の視点で読み解く身体と心の疲労回復図表 総合的健康度ポジショニングマップ(一例)-6-4-202468-4-20246健康関数 Y =0.53×[指標⑩] ★0.40×[指標⑪] ★0.34×[指標⑫] ★0.33×[指標⑬] ★0.25×[指標⑭] ★0.21×[指標⑮] ★0.20×[指標⑯] ★0.20×[血液成分⑤]0.20×[血液成分④]0.18×[血液成分⑫]0.13×[血液成分⑧]0.11×[血液成分①]0.08×[血液成分⑬]0.04×[血液成分⑭]0.07×[血液成分⑮]0.12×[指標⑰] ★0.15×[指標⑱] ★0.16×[指標⑲] ★0.18×[指標⑳] ★0.22×[指標㉑] ★0.31×[指標㉒] ★……+++++++++++++++++++++★血液検査以外の項目健康関数X =0.53×[指標①] ★0.40×[指標②] ★0.34×[指標③] ★0.33×[指標④] ★0.25×[指標⑤] ★0.21×[血液成分①]0.20×[血液成分②]0.20×[血液成分③]0.18×[血液成分④]0.13×[血液成分⑤]0.12×[血液成分⑥]0.08×[血液成分⑦]0.04×[血液成分⑧]0.07×[血液成分⑨]0.12×[指標⑥] ★0.15×[血液成分⑩]0.16×[指標⑦] ★0.18×[指標⑧] ★0.22×[指標⑨] ★0.31×[血液成分⑪]……++++++++++++++++++++若年-壮年メンタルヘルス疾患リスク群中年-老年生活習慣病リスク群老年糖尿病リスク群一点一点が各個人の位置を表します。左下の位置の人がより健康度が高く、右上の位置に属する人が健康を損なうリスクが高く、このデータでは、3種類のリスク群があることがわかります。作成:筆者

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