エルダー2020年4月号
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エルダー57深ふか代しろ千せん之し、安あ部べ 孝たかし 編/東京大学出版会/2800円+税小西義よし博ひろ 著/公益財団法人日本生産性本部生産性労働情報センター/2000円+税権けん丈じょう英えい子こ 著/勁けい草そう書房/2500円+税生産年齢人口が大幅に減少し、労働力の希少性が増す「労働力希少社会」を迎えつつある日本。著者は、日本が「希少性が高まりゆく労働力をいかに有効に活用するかという方向性を模索する大きな動きの中にある」と認識する。そこで本書では、高齢者を含めた多様な人材が、無理なく労働市場に参加できる社会を実現するための環境づくりにつながる働き方について、近年の働き方改革やこれにともなう社会保障の動きなどを手がかりに詳細に検討している。全体は大きく2部で構成されており、前半は、働き方改革の中心的な議論を、政策的な背景を含めて、わかりやすく解き明かしている。一方後半は、高齢者、女性、パートタイマーの雇用をめぐる現状と課題を整理するとともに、柔軟な働き方を活用して経済を回復に導いたオランダの雇用政策を概観している。入門書らしく、いずれの章も平易な表現が心がけられており、最新のトピックスなどを取り上げた「知識補給」は各章の理解を手助けしてくれるだろう。充実した各種の索引は、人事労務担当者が必要に応じて本書を参照する際に役に立つ。これからの人事施策を検討する際に、ぜひ手に取ってほしい一冊だ。順次施行されつつある「働き方改革関連法」には、今年3月に中小企業に対する適用の猶予が終わる改正事項もある。このため、多くの企業で改正法への対応が進められていると推察されるが、この機会に、いま一度、自社の法改正対応状況を確認してみてはいかがだろうか。法改正の対応状況を確認するには労働法の基本的な知識が必要になるが、通勤や仕事の合間、さらには就寝前の30分程度の時間に、気軽に手に取ってもらえるように「読む講義」として企画された本書は、比較的経験の浅い担当者向けの入門書として最適だと思われる。タイトルに「口述」とあるのは、内容面でハードルが高くなりがちな法律の解説書を念頭に、口述調、つまり講義の再現を目ざしたことを表している。とはいえ、構成と内容には工夫が凝らされており、例えば、解説は平易な表現で統一され、法律の条文はできるだけ原文をそのまま引用。解説の理解を手助けする代表的な判例の要旨も紹介されている。ミニコラムは、本書を読み通す際の息抜きになるだろう。大手企業で人事労務担当者を長年務め、現在は特定社会保険労務士として活躍している著者の経験と知識が活かされた好著である。ちょっと気になる「働き方」の話口こう述じゅつ 労働法入門 第3版スポーツでのばす健康寿命科学で解き明かす運動と栄養の効果「平成30年簡易生命表」(厚生労働省)によると、日本人の平均寿命は、男性が81・25歳、女性が87・32歳となり、男女ともに過去最長を更新した。一方、『令和元年版高齢社会白書』によると、日常生活に制限のない期間(健康寿命)は、2016(平成28)年時点で男性が72・14年、女性が74・79年となり、2010年と比べて男女ともに延びている。しかし、要介護・要支援の認定者数は毎年増えており、健康寿命をいかに延ばすかが超高齢社会を生きるための大きな関心事であり、課題となっている。本書は、健康を維持するために必要な運動と栄養の知識をまとめた一冊。しかし、一般的な健康書とは趣を異にしており、運動効果などを科学的根拠に基づいて説明しているので、「理屈を理解したうえで運動をしたい」という人向けであるところが特徴だ。例えば、身体の形態や機能の現状を把握するためのチェック方法や加齢による変化などを解説したうえで、実践としてのウォーキング、水中運動、筋力トレーニングなどの重要性や効果、具体例を紹介。また、肥満や高血圧、糖尿病などの予防と改善、食事と栄養についても解説している。健康を維持するために必要な知識が得られる良書である。だれもが労働市場に参加しやすい環境づくりにつながる働き方を考える経験の浅い担当者でも理解が進む講義形式の入門書。働き方改革関連法にも対応高齢期まで健康を保持・増進するために学んで理解し、実践したいこと

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