エルダー2020年4月号
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2020.44株式会社Next Story代表取締役 昭和女子大学現代ビジネス研究所 研究員西村美奈子さんセカンドキャリアについて、より広い視野で考えられるよう支援しています。―女性のセカンドキャリアを支援していくうえで、企業にはどのような制度や取組みを求めますか。西村 これは対象が女性か男性かを問わずですが、自らのキャリアを考える〝キャリア教育〞と、スキルのアップデートを目的とした〝スキル教育〞は、車の両輪として絶対に必要です。2019(令和元)年のOECD(経済協力開発機構)の報告によると、「日本では、就労関係研修への高齢労働者の参加の機会が少なく、OECDの最下位に位置している」とあります。また、別の国際比較統計を見ると、高年齢になってからの給与の著しい低下は諸外国に例を見ないほどです。つまり、シニアの賃金の大幅低下と労働の質の低下は、新たなスキルを必要とせず教育も不要との認識につながり、それがモチベーション低下を生み、生産性が低下し、シニアは戦力外との位置づけから、給与も低くてよいという負のスパイラルが起きています。 厳しい経営環境のもとで、かぎられた教育予算は若者に回され、中高年者は後回しにされがちですが、これからは社内におけるシニアの比率が高くなるので、シニアを貴重な人的資源としてとらえ、キャリア教育とスキルのアップデートを目的としたスキル教育にもっと力を入れるべきです。 もちろん、〝戦力〞となるためには、シニア自身にも学び続ける姿勢が必要となります。―そのなかで特に、女性を対象とした取組みで求められることは何でしょうか。西村 人的ネットワークの構築を支援することです。先ほども触れましたが、女性には縦のネットワークが少ない。また、企業内でまだまだ少数派の女性幹部社員には、横のネットワークも必要です。社内だけではネットワーク形成のための人数が十分ではないので、他社のマチュア世代の女性と交流しながら、キャリアを考える「場」を、積極的に提供してほしいですね。社内での上下関係や仕事上の利害関係などを気にすることなく、将来についてニュートラルに本音レベルで語ることができるのが、他社の人たちと交流する強みです。私たちも、そんな「場」の提供に貢献できると思います。―政府が「70歳までの就業機会の確保」の方針を打ち出していますが、女性の働き方という観点からご意見を聞かせてください。西村 継続雇用と並んで、シニアの起業や転職、つまり流動化を後押しする方針は大歓迎です。これまでの雇用制度にあてはめるのではなく、シニアが柔軟に働ける「働き方改革」が必要です。これまでは「女性活躍」というと若い女性、「シニア活用」というと男性をイメージしていろいろな手が打たれてきましたが、そこには「マチュア世代の女性」が欠落しているように思えてなりません。この人たちが一定のボリュームを持って存在していることを視野に入れ、試行錯誤しながら、成功事例の共有が進むことを期待しています。シニアを戦力ととらえキャリア教育とスキル教育を(聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一撮影/中岡泰博)

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