エルダー2020年6月号
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2020.68やかに進めていかなければなりません。これまでの企業における人材育成や人材配置政策に大きな変革を迫るものであり、たやすいことではないでしょう。 また、現行の65歳までの雇用確保措置の延長線上に70歳というゴールを置き直すことになるわけですが、あくまでも雇用確保措置の対象は正規雇用で定年を迎えた人の就業機会の確保です。労働市場で仕事を探している高齢の求職者の就労を促進するためにも、プラスアルファの取組みが必要になるのではないかと思います。 70歳までの雇用確保が努力義務になると、特に大企業では早期退職が促進される懸念もあります。従来の雇用・処遇制度を維持したまま70歳までの雇用を実現するのは困難で、労働市場をもっと開かれたものとするなかで、高齢者の就業機会の確保を考える必要があります。賃金制度のあり方を含め、いわゆる日本的雇用システムからの変革を同時に進めていかなければならないと思います。そして、雇用にかぎらず、エイジレスな社会気運を高める必要もあるのではないでしょうか。65歳を過ぎても働きたいシニアは多いが身近な活躍事例の情報が少ない―髙平さんは﹁東京セカンドキャリア塾﹂の講師などを務め、65歳以上のシニアと直接向き合ってこられました。シニアの就業意識について教えてください。髙平 「東京セカンドキャリア塾」(詳細は16~20頁参照)は、都内在住の65歳以上のシニア約120人を塾生として、6カ月間にわたり多彩なプログラムで学び、実際に就労支援も受けることができる東京都の高齢者向け就労支援事業です。2018年度からスタートし、現在は2期目が終了したところです。最高齢では、78歳の人が受講しています。 塾生の就業意欲は総じて高く、女性より男性の方が高い傾向にあります。また70代でも、通塾後に就労意識が前向きに変わる例が少なくありません。 65歳で再雇用の終了後、厳しい就職活動を経験するなかで、年齢の壁という現実と、自己認識との間に大きなギャップを痛感したという声を耳にします。特に大企業で活躍した男性に見られる特徴で、その点、どちらかといえば昇進機会に恵まれなかった女性は切り替えが早く、新しい環境下でも、自分の居場所や役割を見つけて、柔軟に適応できる人が多いという印象を持ちます。 そして、共通しているのは、事例を知りたいという欲求が強いことです。70歳やそれ以上の1986(昭和61)年、株式会社エム・シー・メイツ(現株式会社リクルートスタッフィング)に入社。1995(平成7)年より高齢者派遣や再就職支援事業等に従事。2011年8月、株式会社マイスター60へ転進。定年世代の就労支援事業や職域開発事業に従事し、同社常務取締役を経て2017年に独立し現職。産業能率大学大学院経営情報学修士。一般社団法人シニアセカンドキャリア推進協会 理事長髙平ゆかり(たかひら・ゆかり)

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