エルダー2020年6月号
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2020.610いです。そして、外的キャリア(地位、資格、年収など外から見たキャリア)ではなく、内的キャリア(働きがいや生きがいなどの価値観)の充実をうながす人材育成のしかけづくりを考えることが大事です。 そしてこれらの取組みの前提として、何よりも重要なのは、健康経営をしっかりと推進することです。仕事で疲れ果てたシニアを量産するような企業は、生涯現役社会の実現を阻害する存在でしかありません。働く人に必要なのはキャリアに対する当事者意識―働く人自身は、生涯現役社会の到来に向けて、どのような姿勢が必要でしょうか。髙平 一番大切なキーワードは「キャリアオーナーシップ」です。受け身の姿勢で、会社から与えられるキャリアを自分のキャリアだと勘違いしていると、会社から離れたときに自分を見失ってしまいます。生涯現役時代は、定年で会社から離れた後も職業寿命が続きますから、「自分がどうしたいのか、どうなりたいのか、どうあるべきなのか」という当事者意識を持つことが大事です。これが「キャリアオーナーシップ」です。オーナーシップは持ち主、所有権という意味で、自分のキャリアは自分のものであることを自覚するということです。 そうした自覚を持ってキャリアの選択肢を広げるために、学び直しを継続していく姿勢が求められます。自分から会社を取り除いたら何も残らないというような、会社にぶらさがった現役時代を過ごしていると、とても人生100年時代を持ちこたえられません。 それから、異動や転勤、出向などの環境変化にともなうストレスを、レジリエンス(外的な刺激に対する柔軟性・復元力)を鍛える機会として、前向きにとらえる心構えも大事です。そのような環境変化がなくても、いつでもそのような事態がわが身に降りかかることを想定して、どうするかを考える習慣を身につけておくことを推奨したいと思います。 これらを意識し、実践しながら、いま勤めている企業に限定されない専門性や基礎能力を磨き、不確実な将来や時代の変化に対応できる自走力を確かなものにしていく努力が求められます。ごくわずかな人にしか開けていない、社内トップへの昇進をひたすら目ざす(外的キャリア)ことより、自己の職業能力を高め、充実させることを目ざす(内的キャリア)ことのほうが、職業寿命を延ばすには効果があります。これまでの雇用のあり方を制度・マインド両面で見直す―﹁70歳までの就業機会確保﹂を実現するために、どのようなことが課題になるでしょうか。髙平 65歳以降も社員を何らかの形で雇用し続けることは、すでに一部では始まっています。特に中小企業では、人材確保の必要性から、年齢にかかわらず貢献が期待できるシニアを引き留めざるを得ない事情があります。髙平氏が講師を務めるセミナーの様子

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