エルダー2020年6月号
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特集定年退職後の多様なキャリアを考えるエルダー11 他方で大企業では、すでに50代半ばでの役職離脱など処遇や職務内容の変更、役割や職位の返上などで、働き手のモチベーションが大きく減退する問題が指摘されています。このような境遇に身を置くと、その時点を事実上の定年ととらえてしまいがちで、そこから70歳まで雇用し続けることや、社外に活躍の場を移して70歳まで就業機会を求めることは、とてもむずかしくなります。 潜在能力は十分あるはずなのに、その力を発揮できない、あるいは不活性化している「もったいない人材」が、再雇用した社員を中心に、企業内に滞留したままという困った事態が生まれています。もちろん、業界や職種の違い、あるいは労働組合の有無などによって各社で状況が異なり、また社員の就労に関する意向も、65歳以上になればさらに個人差が大きくなることから、一律に物事をとらえるわけにはいきませんが、このような課題は、首都圏の大企業の社員に多く見られる傾向があります。 メンバーシップ型雇用や年功賃金制度といった日本型雇用システムは、こうした大企業に、より強く見られる特徴です。しかし、高齢になっても活性化した状態で仕事を続けるには、市場で評価される専門性を持つ人材であることが必要です。また、その人材を活用する企業は、専門性を正しく評価し、貢献に対してきちんと報むくいる制度やマインドを持っていなければならないとすれば、やはりこれまで日本の大企業が長く続けてきた雇用・賃金制度の改革を進めなければならないわけです。それをいかに進めるかということが、最大の課題になると思います(図表)。―生涯現役社会の実現に向け、社会や地域で取り組むべきテーマとして、どのようなことがあるとお考えですか。髙平 地域の取組みとしては、現在のシルバー人材センターをもう少し高度な形で活用できないだろうかと考えます。短時間の軽作業を紹介する機能にとどまらず、より広く地域のコミュニティづくりのプラットフォームとしての役割を果たすような場ですね。現役世代や学生、孫世代ともコラボレートしてイベントや仕事起こしに取り組むといった活動の拠点になるというイメージです。すでに、地域社会の支え手となるような取組みを始めているシルバー人材センターも出てきています。 一人暮らしの高齢者の生活をサポートするハブ(中核)として機能させることも考えられます。いまのシルバー人材センターの活動状況を見ると、そのようなことができるポテンシャルは十分あると思います。企業に雇われるだけが就業ではありません。シニアが、地域で必要とされる公共の仕事のにない手として働くことも、生涯現役社会の重要な側面ではないでしょうか。資料提供:SSC髙平氏図表 人生100年時代のキャリア戦略18~22歳 30歳 40歳 50歳 55歳 60歳 65歳 70歳 75歳 80歳 90歳 100歳自発的かつ自律的なキャリア観が未来を変える長寿化により60歳以降まだ30~40年の時間→職業生活のあり方を見直す機会を持つ(キャリアの時間軸が長くなる➡専門性強化やキャリアチェンジも可能)専門性強化型定年・再雇用パラレルキャリア型継続雇用終了後も雇用にかぎらず専門性を活かした働き方ができる状態へ

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