エルダー2020年6月号
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特集定年退職後の多様なキャリアを考えるエルダー13前提とし、そのうえで、先方の会社と当社が、その出向者を通じてよりよい関係を築いていきます。何より、出向する本人が、新しい職場で活躍し、60歳以降の生活の見通しや生きがいが持てることが大事です」と話す。社員、出向先、自社の三者すべてにとってプラスとなる「win︲win︲winの関係」を目ざしている。また、社外出向を活性化するのは、単にシニア層の活躍先を探すという意味にとどまらず、会社全体として健全な人材の流動性を確保するためでもある。若い社員が活躍したり、新たに必要な人材を採用するには、人材がうまく社外に流れていく形を定常的につくるべきと考えた。主に役職経験者が対象貢献した社員に報いる意味合いも社外出向の対象は、50代の幹部社員。現在は、基本的に役職経験者(役職定年者または現役の役職者)を対象としている。以前は、①60歳以降の就業を希望している、②原則50歳以上(要請によっては40代も)、③パフォーマンスが標準以上という条件だったが、現在は、「会社に貢献してくれた人に報いる」という考えから、より対象を絞って運用している。出向後は、60歳までは、大日本住友製薬の社員扱いであり、処遇は自社と同水準。60歳の定年退職以降は出向先に転籍となるが、65歳まで働くことができ、かつ、自社で再雇用する場合の処遇を上回る出向先を紹介する。50歳時にキャリア研修を実施面談などで本人の希望をしっかり確認では、出向までの流れを見ていこう(次頁図表)。まず、50歳で、「CD(キャリアデザイン)50」というキャリア研修を実施する。キーワードは「エンプロイアビリティ」。これから10年間、あるいはその先も含め、どういう人生を歩むかを考えるきっかけにしてもらう。自分の市場価値を自己分析するとともに、職務経歴や資格・スキルを棚卸しし、5年後、10年後の未来予想のなかで職業人としての自分をイメージし、参加者同士で語り合う。再雇用を選んでも、出向を選択するにしても、いまのまま60歳まで何もしなければ知識やスキルが陳腐化していくことに気づかせるための厳しい内容だ。そのうえで、将来の計画を「キャリアプランシート」にまとめて人事部に提出してもらう。そこでは、60歳以降、自社での再雇用を希望するか、社外でよい活躍機会があれば希望するか、将来どの地域に生活拠点を構えるか、活かしたいスキル・資格などを表明する。そして、人事部のキャリア開発担当(全員が国家資格であるキャリアコンサルタント)が分担して、一人ひとりと「キャリア面談」をする。例えば「薬剤師の資格を持っているが、MR(営業担当)なので、いまは活かせていない。将来、地元に戻って薬剤師の仕事をしたい」といった本人の思いがあれば、「この人が先々、出向の候補になったら、こういう求人とマッチングできそう」と心づもりをしておく。ただ単に働く場を提供するのではなく、一人ひとりが生きがいを持ってモチベーション高く働けるよう、その人に合った出向先を紹介する方針なので、社員の思いや価値観をくみ取るところには手間を東條伸一郎人事部キャリア開発担当オフィサー(左)と山崎浩二人事部長(右)

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