エルダー2020年6月号
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2020.614かけている。そのことが出向に対する安心感と納得感につながっている。本人に出向の打診をするのは、役職定年のタイミングが多い。役職定年を迎える1年ほど前には、社外で活躍していただきたい人材かどうか、検討される。それを受けて、キャリア開発担当が本人に会い、あらためて本人の希望を確認し、出向先を探す。本人が出向を希望していない場合もあるが、話し合うなかで折り合いがつくことが多い。「社員は、現状の延長線にある一つの可能性くらいしか考えていないことが多く、『こんな道もあるのでは?』と話すと、関心を持ってくれます。また、その方のよく知っている先輩社員の出向事例を紹介すると、より心に響くようです」と東條オフィサーはいう。出向先は製薬業界にかぎらない。最近求人が多いのは、ジェネリックの医薬品メーカーだが、薬の卸おろしの会社からの求人も増えている。研究職は、大学や公的研究機関で、産官学連携の橋渡し役として活躍している例もある。なお、近年は、出向候補者の人数が落ち着いてきているので、すでに関係ができている会社に出向することも多い。常時出向者を受け入れてもらっている会社が50~60社あり、全体の3分の2くらいは、そうした会社に、先輩の後任や増員として出向する。出向候補者が既存の出向先とマッチしない場合は、新たな出向先を開拓する。キャリア開発担当がさまざまな企業を訪問し、自社の取組みを説明するところから始めることもある。過去10年間のこうした努力の積み重ねにより、出向先に困らない状況ができてきた。気持ちの切り替えをうながして送り出し出向後もていねいにフォロー出向者を送り出す際に特に気をつけているのは、気持ちの切り替えをしてもらうこと。「前の会社(大日本住友製薬)ではこうだった」というような話の仕方は絶対にしないように伝えている。多くの出向者がうまく気持ちを切り替えられるようになったのは、経営の努力によるところが大きい。「『出向』という言葉には、一般的には、本人の意思に関係なく、社命で行くことが決められ、一方通行で帰ってこられないというネガティブなイメージがありました。この10年間そのイメージを払しょくすることに苦労しました。当時の社長(現・多た田だ正まさ世よ会長)が、『60歳までの雇用は必ず守る。ただ、全員の活躍の機会を自社のなかで保障するのはむずかしいので、会社が支援して社外での活躍の場を提供する』という道筋を示してくれました。いまでは、役職定年を控えた社員から、『いつ紹介してもらえますか』と聞かれるくらい社外出向を前向きにとらえている社員もいる」と東條オフィサーは話す。出向後も、会社と縁が切れるわけではない。社内誌に「出向者だより」というコーナーを設50歳キャリア研修(CD50)55歳役職定年(課長)57歳役職定年(部長)60歳定年退職65歳再雇用社外出向60歳以後、転籍キャリアプランシート提出 ⇒ キャリア面談 ⇒ マッチング図表 シニア社員の社外出向への流れ

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