エルダー2020年6月号
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特集定年退職後の多様なキャリアを考えるエルダー17当派遣事業の特徴の一つ目は、東京都が派遣にかかる費用を全額負担するため、受入れ企業に費用負担が一切かからないという点だ。派遣就業をしている期間中に要する費用や、直接雇用に至った際のマッチング費用はすべて都が負担している。企業の費用負担を肩代わりすることで、高齢者を雇用するハードルを下げ、事業を試用しやすくしている。二つ目の特徴は、職種を事務職、営業職、IT技術職の3業種に限定したことである(図表)。西川課長は「現在の求人市場を見ると、65歳を超えて働こうと思っても、求人は清掃業や警備業が多くなっており、事務や営業など前職の経験を活かした仕事を希望するホワイトカラーの実務経験者とのミスマッチが起こっています。このミスマッチを解消したいと考え、対象職種を限定することにしました。実際の登録状況を見ても、大企業に定年まで勤めるなど、実績も能力もある高齢者が、数多くエントリーしています」と説明する。三つ目の特徴は、最短1週間、最長2カ月のトライアル派遣ということ。実際は1~2カ月のトライアル期間を設定する企業が多く、この期間でじっくりと高齢者を雇用するノウハウを取得し、高齢者の活躍する場を整えることができる。一方、高齢者は、派遣就業中に専任のキャリアカウンセラーがつき、業務や働き方の相談に乗ってもらえるので安心だ。就業後、派遣先に就職しなかった場合にも、カウンセリングやマッチングイベントなどでさらなる就業支援を行っている。「東京キャリア・トライアル65」の受入れ企業はIT企業と小売が多く、職種は男性が一般事務48人、営業33人、テレフォンアポイントメントが23人、女性はテレフォンアポイントメントが35人、一般事務31人、総務事務13人となっている。現役時代と同じ職種を希望する人もいれば、「新しいことがしたい」と異なる職種を望む人もおり、さまざまだ。2018年度はエントリーが916人、そのうち305人が122社の企業に派遣され、104人が直接雇用に至った。西川課長は、「高齢者の持つ知識や経験に対するニーズがあったことを実感しています。次年度からはさらに多くの人が直接雇用につながるよう、受入れ企業のコンサルティングに力を入れ、高齢者とのつき合い方、あるいは受入れ環境の整え方などの解決策を提示していきたい」と方針を述べた。65歳超のキャリアを考える学び直し「東京セカンドキャリア塾」「東京セカンドキャリア塾」は、65歳以上が対象の「楽しく学ぶ!」をテーマとした高齢者の学び直しの場である。就業やボランティアへの従事などを見すえ、「これからの生き方」を考えてもらうために開設したもので、新しいことにチャレンジしたいと考える意欲的なシニアが、セカンドキャリアについて楽しみながら学んでいるという。校舎は高齢者が自宅から通いやすいように、2カ所に開設。全54講座の多彩なセミナーは、概要や理論を中心に学ぶ基本講座と、実践的な図表 「東京キャリア・トライアル65」対象職種事務職営業職IT技術職業務例: 一般事務 営業事務 経理事務 貿易事務 特許事務 英文事務など業務例: 新規開拓 ラウンダー 営業研修 指導 テレフォンアポイントメントなど業務例: SE プログラマー ヘルプデスクなど

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