エルダー2020年6月号
21/68

特集定年退職後の多様なキャリアを考えるエルダー19同社は2019年1月に新たに人材開発事業をスタートさせた。アルバイトの経験しかない、就業経験がない、就業ブランクがある若者を、自社で社員として雇用し育成する、長期的転職支援事業「WORX(ワークス)」である。WORXは、職業経験のない若者をMAPで一時的に採用し、ビジネス研修を受けながら同社で実務経験を積み重ねるというもの。研修と実務を並行した包括的な就業支援を通じて資格取得に導き、2~3年後には転職できるように「ファーストキャリア構築」を図っている。飯田健太郎代表取締役社長は「若者の就職についてはこれまでにないほど高い水準で求人倍率が推移していますが、20代半ばまで引きこもりやフリーターを続けてきた若者は、企業から選ばれにくいのが実情です。WORXは、こうした職業経験のない層にスポットを当てた人材開発事業です」と説明する。ほかにはない新しい人材育成サービスに注目が集まり、テレビやラジオのほか、女性ファッション誌など多数のマスコミに取り上げられている。現在は、企業から業務の一部を請け負うBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を立ち上げるための準備を進めている。BPOは一般的に、総務、経理、人事・採用、コールセンターなどの間接部門業務で受託するケースが多い。ここにきてなぜ、BPO事業を立ち上げるのか。WORXではIT業界で活躍するエンジニアを育成しているが、なかにはITの素養がない若者もいるという。こうした人材の受け皿として、BPOのシステムを構築することにした。しかし、社内にはBPO事業にかかわった社員がほとんどおらず、知見や経験を持つ人材を迎えたいと考えていた折、人材派遣会社の紹介を経て「東京キャリア・トライアル65」にたどり着いた。飯田社長は「一概に若い人材の生産性が高いとは思っていませんし、高齢者の雇用に、もともと抵抗はありませんでした。それは、定年後も精力的に趣味などに打ち込む私の親族の姿を見ているからだと思います。その親族には、『仕事をしていないのはもったいないので、会社を手伝ってほしい』と声をかけましたが、首を縦に振ってはくれませんでした」と笑う。さっそく、「東京キャリア・トライアル65」に申し込んでみると、BPO事業の立ち上げから運用までを経験している、探していた条件にぴったりと合致する人物を紹介された。「経験は申し分なく、あとは人柄がよければぜひという気持ちでした。『東京キャリア・トライアル65』はミスマッチを防ぐトライアル期間があったこともよかったと思います。人柄を含め、お互いをより深く知ることができたので、納得のうえで入社してもらうことができました」とトライアルの利点について述べた。事務系職種の求人がなく難航した再就職活動平田昌まさ望もちさん(66歳)は、情報処理会社や派遣会社でBPO事業の立ち上げから運用・確立までの一連の業務に従事した経験を持つ。豊富な経験を持つ平田さんだが、2017年に63歳で家庭の都合で退社し、仕事から離れた。しかし状況が落ち着くと、「まだ働きたい」と飯田健太郎代表取締役社長

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る