エルダー2020年6月号
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2020.626の意識を持たない人に、その意識を持ってもらうことです。特に日本のビジネスパーソンの多くは、終身雇用制の影響もあり、企業の外の社会に対してなかなか意識が向かない傾向があります。そこで、会社に勤めている現役のうちに一日も早く社会参画への意識を持ってもらうために、現在は大企業向けのセミナーに力を入れています」と、奥山氏。セミナー参加者に気づきを得てもらうために、プログラムのメインに据えているのがプラチナ・ギルド アワード受賞者の講演である。「退職後に何をするか、退職してから考え始めたのでは遅すぎます。実際、シニアで活躍している人の多くは、在職中から準備を始めています。そこで、セミナーでは実際にNPOなどで活躍している人の講演を聴いていただき、自分自身のこれからについて考える機会にしていただいています」という。NPOとスキルを持ったシニアを結びつける活動の必要性奥山氏は、旧株式会社住友銀行(現・株式会社三井住友銀行)でロンドン支店長兼欧州営業部長、専務取締役などを歴任し、2002年に株式会社日本総合研究所(以下、「日本総研」)の代表取締役社長に就任。2006年に会長職に就任したのを機に、スポーツから料理に至るまで、ありとあらゆる趣味の世界を徹底的に追求したという。奥山氏が社会貢献活動に意識を向けたきっかけの一つに、右目の失明があった。それを機にゴルフなどのスポーツを一切やめ、これからの生き方について考えるようになったという。そんなときに、たまたまテレビのニュース番組を観ていて目に止まったのが、日本総研の社員だった嵯さ峨が生いく馬ま氏だった。嵯峨氏は30代で日本総研を退職後、社会的活動を行うNPOなどのソーシャルセクター※1の課題に対し、「プロボノ※2」での支援をコーディネートする、「認定NPO法人サービスグラント」を立ち上げた人物。プロボノの手法に興味を持った奥山氏は、さっそく嵯峨氏に連絡を取り、サービスグラントの活動を手伝うようになる。「年齢を問わず、さまざまな世代、さまざまな分野の人たちから学ぶことができるのは、会社員時代には体験できないことでした」。現役世代のボランティア意識の高さに触れるなかで、「少子高齢化が進む日本で、これからは元気で活動的なシニアが一人でも多く社会参画することが大切だ」との思いに至り、プラチナ・ギルドの会の構想へとつながった。また、嵯峨氏と一緒にサンフランシスコを視察し、ソーシャルセクターの実態を学んだことも大きかったという。同地で年に一度開催されるボード・マッチ※3のイベントでは、150ものNPOがブースを出し、1000人を超える人々が参加。こうした場が実現できるのは、裏方であるボランティアセンターの努力があってこそであり、日本においても、そうした中間支援団体の必要性を実感したという。「気づき」を得るためのセミナー開催現役時代からの学びがカギを握る退職後のセカンドキャリアとして、社会貢献※1 ソーシャルセクター……社会課題の解決に取り組む組織のこと※2 プロボノ……社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや専門知識を活かしたボランティア活動※3 ボード・マッチ……「Board(理事)」とNPOをマッチングするイベント奥山俊一理事長

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