エルダー2020年6月号
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2020.62株式会社USEN-NEXT HOLDINGS 執行役員 コーポレート統括部長住谷 猛さんいと考えました。―それは、従来の定年後再雇用制度ではむずかしかったということなのでしょうか。住谷 当社の再雇用制度は、ほかの企業と同じように60歳以降は1年契約の有期雇用となり、定年前より減額された一律の報酬で65歳まで働く仕組みでした。以前、再雇用になる人と話した際、「あなたには今後も長く働いていただきたいと思っていますが、いまの正直な気持ちを教えてほしい」とたずねたことがあります。すると「率直に申し上げて、かなりモチベーションが下がります。〝今日から契約社員です〞といわれるのも寂しい気分です」と返ってきました。その現実を受けとめ、2018(平成30)年初頭のころから、モチベーションが下がらない仕組みについて真剣に考え始めました。ちょうど政府内でも70歳雇用の法的検討の動きが出ていました。当社としてもモチベーションを維持しつつ能力を発揮してもらうにはどうするかを検討し―貴社では2019(令和元)年9月から従来の定年後再雇用制度を見直し、グループ全社を対象にした70歳定年制度を導入しました。65歳定年ではなく、一気に70歳に延長した理由を教えてください。住谷 会社に貢献してもらえる人材を確保したいというのが率直な目的です。当社の社員数はグループ全体で約5000人、平均年齢は約42歳です。毎年約40人が60歳を迎えていますが、若年層の人口が減少するなかで優秀な人材を確保していくことは、どの企業にも共通する課題です。私たちも新卒採用や中途採用に積極的に取り組んでいますが、解決する方策の一つが70歳への定年延長です。「シニア層はITリテラシーが低い」といわれた時代もありましたが、いまの60歳は、35歳ごろには職場にパソコンが登場しており、十分に使いこなせます。年齢というフィルターで判断するのではなく、その人の持つスキルや働く意欲を評価し、能力を発揮してもらいたた結論が、70歳への定年延長だったのです。―定年延長だと基本的に処遇体系は60歳前と同じということになりますが、具体的にはどのような仕組みでしょうか。住谷 実は70歳定年延長制度の導入と同時に、すべての社員の人事・賃金制度を改定し、年俸制に一新しました。従来の人事制度は等級ごとに給与テーブルがあり、毎年の評価結果で昇給する、日本企業で主流の職能等級制度でした。それをすべて廃止し、本人のになう役割の純粋な現在価値、われわれは「人材価値」と呼んでいますが、それを毎年評価して年俸が決まる仕組みに変えました。したがって年功的要素はまったくありません。給与テーブルや評価指標がないので、管理職はきちんと成果を評価し、公平な分配をすることが求められます。昨年9月から制度をスタートし、今年8月の決算後の9〜10月に最初の評価が行われることになります。 定年延長の対象者も、同様の仕組みで評価されます。ただし、区切りとして60歳を一度目の定年と位置づけ、本人が希望すれば正社員として再雇用し、70歳で二度目の定年を迎えるという制度になっています。報酬は60歳時点の役職・業務内容・評価を加味し、一人モチベーションに課題があった再雇用制度定年延長で〝いま〞の「人材価値」を評価

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