エルダー2020年6月号
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2020.646に接続することです。そして全国の大学で講義のオンライン化が進むことになるでしょう。新入生は自宅に遠隔講義に対応できるパソコンやインターネット環境を持っているとはかぎりません。まして小中高校においてはもっと環境は整備されていないことでしょう。遠隔講義で講習をするために教室に児童・生徒・学生を集めては本末転倒です。新年度が始まるこの時期に、急を要する対応に心血を注いでいる現場の教職員には本当に頭が下がります。現場の教職員の安全確保と働き方改革という観点からも、もっと制度やルールを柔軟にして時間的にも精神的にも余裕を確保することは優先されるべきことと考えます。また、いままでの教育をそのままオンラインで展開することに固執する必要もないと思います。この状況だからこそ、児童・生徒の主体的な学びをつくる機会ととらえ、学びをアップデートしていくことも教育関係者のコミュニティで議論されています。日本には、豊富な経験を持つ定年退職した教師が大勢います。その人たちがICTを活用して自由な発想で新しい学びを世の中に発信し、現場の教師をサポートしていくことで、日本の教育は変わっていくかもしれません。教育は国の基本です。退職された先生たちの力を積極的に活かすことも重要な選択肢の一つでしょう。企業においても教育機関においても、このような非常事態へ対応できるかは、第2回の連載で紹介した「GジーバーBER」※3の設計に関わってくるように、平時からの備えと活用にあります。テレワークを行うために必要な装置がなければ、業務を停止せざるを得ません。たとえ用意はできていても普段から活用していなければ業務のなかでテレワークを機能させることはむずかしいでしょう。新型コロナウイルスのワクチンの実用化までは数年はかかるといわれています。ましてや医療崩壊を起こさないスピードでの集団免疫の獲得までは、途方もない年月を要することになります。それまでは断続的に経済活動の自粛と再開が行われる可能性が高いです。私たちの経済の仕組みそのものも、オンラインで動かす領域を拡大しアップデートしていかないといけません。GBERでは、オンラインで扱う仕事へも対応できるようにアップデートしました。教育分野など、シニア向けのオンラインの仕事の開拓にも力を入れていこうと思います。テレワークを妨げる事務手続きの慣習就労の話に戻りますと、オンラインでの仕事を妨げる最も大きな要因は、押印や直筆サインが求められる事務書類の提出が本当に多いことです。そのためだけに満員電車に乗って移動することが強いられます。書類を電子的に作成していても、負のレガシーが残っていて、なぜか最終的に書類を印刷して押印やサインを求める運用をしている職場もあるでしょう。結果として常時出社せざるを得なくなり、本人とその家族を不安にさせてしまいます。組織にとってもこれは感染者が出た場合に業務が完全に停止してしまう脆ぜい弱じゃくな仕組みであり、完全オンライン化に向けた早急な変更が求められます。事務手続きのための電子システムはオフィスでないとアクセスできないこと、前述の通り非正規の事務職員にはテレワークが基本的には認められていないことは制度上の課題です。新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、多くの組織で規制緩和や所得補償を検討する動きが出てきました。東京都知事からも可能なかぎり在宅勤務の要請が行われました。通院だったり、健康のためだったり、物流だったり、ライフラインの維持のため外出が必要な人、求められる人が安全に外出できるように、組織や社会には配慮が求められます。アメリカではニューヨーク州をはじめ企業に※3 GBER……就労を希望する高齢者のモザイク型就労を支援するジョブマッチングシステム。詳細は本誌2019年12月号38頁〜参照

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