エルダー2020年6月号
5/68

エルダー3長にするか」という基準に年齢要素はまったく入っていません。年齢ではなく、その人が課長の役割ができるから任せているのです。マネジメントに求められる資質やスキルも大きく変わってきますし、自分のチームを活性化できなければ降りてもらいます。実際に私が担当する人事・総務・広報には九つの課がありますが、2017年12月時点で課長だった人で現在も同じ職務に就いている人は一人もいません。みな役割を変更して働いていますし、元上司や先輩が部下になることもあります。これはシニアも同じです。60歳以降も正社員として同じ業務を担当しますが、役職者にふさわしい人であれば抜ばっ擢てきします。 報酬についても、先ほどいったように成果や貢献度という人材価値を評価して支払います。60歳以上のシニアも30歳の人も、当社の戦力の一人です。全体の人員計画と人件費の予算をきちんとコントロールできれば、定年が70歳になっても人件費が増えることはありません。―若手から70歳まで、「人材価値」を軸に一貫した仕組みを構築したわけですね。社員に期待しているものは何ですか。住谷 前提として当社の企業ビジョンがあります。そのビジョンを実現するために必要な仕組みであり、組織に健全な緊張感を与えるものと考えています。社員に期待するのは、自律的なキャリアの形成です。当社にかぎらず、これまで日本企業で働く人たちは、会社が敷いたレールを歩めば昇格・昇給することができたので、自律的に何かを考え、努力して成果を出していくというキャリア形成をしてこなかったと思います。 しかし、今後減衰していくかもしれない国の経済状況において、シニア層にかぎらず、社員一人ひとりがキャリアを意識し、自律的に個々の能力・スキルを磨くことが企業総体の力になる。それがなければ対外的な競争にも勝てないという強い思いがあります。ひとりの人材価値を査定して決定します。そうした理由は、60歳の人を中途採用するのと同じように、次の10年に向けて新たな気持ちでがんばってほしいという意識づけがねらいです。その後は、ほかの社員と同じように現在価値で毎年評価され、年俸が決まります。―定年延長に躊ちゅう躇ちょしている企業のなかには、若手の活躍機会が奪われ新陳代謝が進まない、人件費が増加するという懸念を持っているところもあります。住谷 新しい仕組みでは、例えば「だれを課年齢要素を除外した評価・処遇制度を導入社員個々の自律的なキャリア意識を醸成

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る