エルダー2020年6月号
59/68

エルダー57楠くす木のき 新あらた 著/中央公論新社(中公新書)/840円+税森 晃こう爾じ 編/一般社団法人日本労務研究会/3800円+税永山久夫 著/悠ゆう書しょ館かん/3200円+税元気に長生きしたい。なるべく長く仕事を続けたい……。何かと忙しいビジネスパーソンが生涯現役を目ざすには、その身体をつくる食事や運動、生活習慣を見直してみる機会が必要だろう。本書は、そんな中高年世代にとって役に立つ、おもしろくてためになる事典である。著者は、本誌「日本史にみる長寿食」の連載でおなじみの食文化史研究家・永山久夫さん。古代から昭和時代までの食事復元研究の第一人者で、長寿食の研究でも知られている。全632頁の本書には、日本の伝統的な食材や食べ方、長寿者の生活習慣など、日本人が暮らしのなかで実践してきた長寿のヒントが満載だ。米、酒、野菜、魚、肉などいろいろな食材の特長や料理から、日本古来の養よう生じょう訓くん、100歳時代を楽しむための「八はち楽らくライフ」のすすめ、生涯現役で長寿を迎えるための五つのステップ、長寿者の長生き習慣などがイラストをまじえてそれぞれ短い文章でまとめられ、興味のあるところから楽しく読める。さらに、「ことわざから学ぶ不老長寿法」や「天あっぱ晴れ! 一〇〇歳食いろはかるた」など、会話の潤滑油になる話も盛り込まれている。おいしく食べて元気に生きるための知識が得られる労作である。近年、労働安全衛生分野では過重労働による健康障害の防止やメンタルヘルスへの対応などの重要性が増しており、「働き方改革関連法」においても労働安全衛生法の改正によって産業医・産業保健機能の強化が図られている。こうした流れを受けて、産業保健スタッフに求められる役割は年々拡大しており、労働安全衛生分野にとどまらず、人事労務管理の分野など幅広い分野への対応も期待されている。本書は、このような状況にある産業保健スタッフ向けの実務書として刊行された。タイトルにある「健康教育・労働衛生教育」とは、産業保健活動の重要な柱の一つで、職場で労働者や管理監督者を対象として行われる集団教育を指す。本書ではこの教育場面で取り上げることが多い65のテーマごとに、そのポイント解説をはじめとして、実際の教育を展開するための素材がまとめられている。付属のCD-ROMにはスライドデータも収録しており、アレンジしたうえで、社内教育に活用できる。取り上げられたテーマは「両立支援」、「ストレスチェック」、「ロコモティブシンドローム」など、最近のトピックも選定されており、産業保健の現場で役立つ一冊となっている。定年退職者に対する地道な取材を積み重ねてまとめたベストセラー『定年後』の著者の最新作。今回のテーマには、「老後の資金」が取り上げられている。偶然ではあるものの、昨年の大きな話題でもあり、本誌の読者のなかにも関心がある人が少なくないと思われる。これまで著者が一貫して主張してきたのは「会社員は主体性を持つことが大事」。それはお金に関しても同様で、本書でもお金との関係を自ら把握することを提唱しており、その実践が「財産増減一括表」の作成である。企業会計の考え方を取り入れた財産を把握するための方法で、自らの資産額や負債額の増減を手軽に把握することが可能になる。こうしてお金と向き合えば、自ずと老後の資金についても理解が進み、無用な不安を抱く必要がなくなるというのが著者の考え方だ。そのうえで、「本当にやりたいことに出費を惜しまず、人生を楽しむべき」とシニア世代に提言している。著者は、本誌2018年8月号の「リーダーズトーク」に登場され、退職後の第二の人生をより豊かにするための秘訣を語っていただいた。本書や『定年後』と合わせて参照してもらえば、貴重なヒントが得られるだろう。日本長寿食事典使える! 健康教育・労働衛生教育65選定年後のお金貯ためるだけの人、上手に使って楽しめる人生涯現役でイキイキと生きるヒントが満載産業医や産業保健スタッフが手元に置いておきたい教育用ツール老後不安の正体を探り、お金と生き方の関係を見直す

元のページ  ../index.html#59

このブックを見る