エルダー2020年6月号
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2020.64株式会社USEN-NEXT HOLDINGS 執行役員 コーポレート統括部長住谷 猛さん―70歳定年制を、社員はどう受けとめていますか。住谷 シニアの方々はまだまだ元気なので、「現役で働けるのでよかった」と喜んでいます。一方、若い社員たちも70歳まで働く環境が整備されたことで、一定の安心感が得られているのではないでしょうか。実際に70歳定年と記載して中途採用社員を募集したところ、応募者が増えました。定年を延長したことで、社員を大切にする会社だと評価してもらえているのだと思います。ただし、70歳定年の考え方や仕組みをいくら発信しても、社員が本当の意味で制度を評価するのは、シニア人材が仕事の成果を出し報酬が上がった、あるいは役職に就いた、といった実例が出てからでしょう。その結果が出るのは今年の10月ですが、それを見てこの制度のよさを、さらに理解してくれるのではと考えています。―貴社ではスーパーフレックスタイム制度やテレワーク勤務制度の導入など、ワークスタイルの変革にも積極的です。目ざしている働き方とはどういうものでしょうか。住谷 2018年6月から「Wワークork Sスタイルtyle Iイノベーションnnovation」という人事プロジェクトを推進しています。核となるのはコアタイムのないフレックスタイムと、利用制限のないテレワークを使い、働くスタイルを自由に設計してもらうことです。ノートパソコンとスマートフォンを全社員に貸与し、自宅でオフィスと同じ環境で仕事ができるようにしています。例えば午前中に家事をしてから出社し、午後の早い時間に退社後、自宅で仕事をすることもできるし、自身の裁量次第で週休3日勤務も可能です。社員にも「会社に来なくていいですよ」というメッセージを発信しています。 目ざしているのは性善説※のマネジメントです。日本のマネジメントスタイルは社員が同じ時間に出社し、管理職が仕事ぶりを監視し、それを評価するという、いわば性悪説に基づいた〝管理〞が主流です。それでは組織の成長につながりません。大切なことは仕事の成果を正しく評価することであり、社員が自律的に働くために時間と場所から解放することが制度の考え方の根底にあります。 この場合に問われるのは、管理職のマネジメント力です。私自身も当初はどうやって部下とコミュニケーションを取ればよいのかすごく悩みましたが、役職者一人ひとりが自分のマネジメントスタイルを真剣に考えるようになっています。いまではうまく回っていますし、総労働時間も1割程度減り、業績も上向いています。―柔軟な働き方は高齢者のニーズにも叶かないます。今後の方向性としてはどのような展望を描いていますか。住谷 一言でいえば「自律する個人の集合体」。そこで実現されるのが人材の多様性です。性別や年齢に関係なく、多様な働き方を通じて自律的にキャリアを形成し、その結果、さまざまなスキルセットを持った人たちが集まって仕事をする組織にしていきたい。そのためにも自律的な働き方ができる環境を、今後もつくっていきたいと考えています。〝性善説〞に基づきワークスタイルを変革問われる管理職のマネジメント力(聞き手・文/溝上憲文 撮影/中岡泰博)※ 性善説……人間の本性は善であるとする倫理学説

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