エルダー2020年7月号
13/68

特集スポーツと健康と高齢者エルダー11においしかった。 そしてもう一つ、スポーツの役割は多くの人に夢、希望、勇気を与えることです。2020(令和2)年の東京五輪は残念ながら延期となりましたが、来年無事に開催されれば、コロナ禍かで疲弊した世界を元気づけてくれることでしょう。 1964年の東京五輪以降、スポーツの大衆化が一気に進みました。高齢者の参加の間口が広がり、あらゆる競技でマスターズを目標に努力している人も増えています。無理をするのは禁物ですが、多くの人たちに自分に合ったスポーツを楽しんでもらいたい。私自身、市民ランナーになってからは、楽しみながら走るようになりました。美しい風景や街並み、花の香りや鳥のさえずり、すべてが楽しみに変わりました。―60代、70代と年齢を重ねていくなかで、日々をイキイキと暮らしていくための心構えについてお聞かせください。君原 何より大切なのは自分の心を変えていくこと。ヒンズー教の教えに「心が変われば態度が変わる。態度が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。運命が変われば人生が変わる」というものがあります。 つまり、人生を変えるためには、まず「心」を変えることが必要なのです。それによって「態度」が変わり「行動」が変わり、最終的に「人生が変わる」というわけです。何かの本で読んだのか、だれかに教えてもらったのかは忘れましたが、この教えを信条として、私は劣等感と向き合い、自分の心を変えることに苦心してきました。 小さな目標を持って、小さな努力を続けていけば、大きな力になるという考え方は私の原点です。高齢になるほど柔軟な考え方ができなくなる人が増えますが、いくつになっても自分の心を自在に変えていくことが求められていると私は考えています。 また健康にとって一番よいのは、やはり適度に運動して体を動かし続けることです。「運動」、「休養」、「栄養」のバランスをとるように心がけてきました。栄養面では現役時代に高橋コーチから厳しい指導を受けたことが財産になっています。 最近は週3回、6㎞ほどのジョギングをしているほかは特にトレーニングはしていません。よく歩くことを心がけている程度です。―今後の抱負や目標をお聞かせください。君原 私の初マラソンは、いまでは「福岡国際マラソン」と名称が変わりましたが、当時は「金栗杯朝日国際マラソン」という名でした。同じ九州出身の金かな栗くり四し三そう先生は1912(明治45)年にストックホルム五輪に出場し世界の水準の高さを実感、その後は自身を研けん鑽さんしつつ日本におけるスポーツやマラソンの普及に尽力されました。92歳で亡くなりましたが、私の目標の一つはまず先生の年齢を超えること。そしてできることなら90歳くらいまでは走り続けたいですね。 昨年、ランナーズ財団※3からランナーズ賞を受賞しましたが、この賞は市民ランニングの普及や発展に貢献した人物に贈られるとのことです。これからもっと自分のできる範囲で市民ランニングに貢献していかなければと気を引き締めています。 来年開催が予定されているオリンピックに関していえば、聖火ランナーの大役を無事務められるよう健康に気をつけて体力維持を図りたいと思っています。円谷さんのメモリアルマラソンに毎年参加しているご縁から、円谷さんの郷里の福島県須す賀か川がわ市でぜひ走ってほしいといわれ、喜んでお引き受けしました。その日が来たら円谷さんと2人で走りたいと思います。 マラソン会場は札幌になる予定ですが、札幌は先にもお話しした円谷さんをはじめ、仲間たちとの思い出の地です。多くの人から声援をいただいた東京オリンピックから57年。今度は私が声をからして選手たちを応援する番ですが、私の隣にはきっと円谷さんがいるはずです。※3 ランナーズ財団……市民参加型スポーツを支援し、市民の健康増進に寄与することを目的に設立された一般財団法人。市民ランニングの普及、発展に貢献する人物・団体などを「ランナーズ賞」として表彰している

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る