エルダー2020年7月号
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特集スポーツと健康と高齢者エルダー21会(2012年)、リオデジャネイロ大会(2016年)と連続して鈴木選手を支えている。女子選手では、トライアスロンの谷(旧姓・佐藤)真ま海み選手や走り幅跳びの村上清さや加か選手をサポートしている。パラリンピックの競技レベルは年々高くなり、義足づくりにも、競技と身体特性に合わせて選手の最大能力を活かす精度と機能が求められているという。また、選手、指導者とともに練習の質を高めていくことにもチームの一員として努める日々だ。義足を履いてどんなことができるか考えつくることを通して得られる喜びがある取材時(4月)は新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で各種スポーツ大会も練習も中止となってしまったが、普段の臼井さんは、週末のたびに「スタートラインTokyo」のメンバーが出場するスポーツ大会に同行し、スケジュールは常に埋まっている日々だという。「日本選手権、関東大会、地区大会など、ありとあらゆる大会へ金曜の夜から出かけて土曜、日曜と同行します。トップアスリートだけでなく、初心者の大会にも行きますよ」そうした日々の原動力は何かとたずねると、「ものづくりが好きですし、つくることを通して出会いがあり、選手や子どもたちの成長に立ち会える喜びがあることです」と返ってきた。いまではスポーツ用義足にとどまらず、ハイヒールなどが履けるおしゃれを楽しむための「リアルコスメチック義足」や、妊婦のための「マタニティー義足」なども開発。「リアルコスメチック義足」を披露するファッションショーの開催にもかかわり、ショーに参加してくれた若者との交流も臼井さんの力になっている。「まずは義足を履いて学校に行く、仕事に行くことから。その次にスポーツやファッションを楽しむなど、その人の興味のあることができるように、動き出す一歩を後押ししたい。そんな思いで取り組んでいます」臼井さんは2019年3月、63歳で定年を迎えた。いまは嘱託職員として定年前と変わらない条件や環境で仕事を続けているそうだ。「仕事に対する思い、姿勢は年齢に関係なく、現場にいるかぎり初心を忘れずにやっています。ただ、歳を重ねた分だけ経験を多く積んでいるので、若い後輩にフィードバックできることが増えてきました。これはこれからも、より力を入れていきたいことです。また、現場には70代の先輩もいますので、目標になります。やっぱり背中が見える、見られるという環境がよいのだと思います。僕も元気ですし、まだまだがんばります」東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まり、「夢の実現が先延ばしになりましたが、スポーツやファッション、さらに義足でいろいろなことができる人をもっと増やしていきたい」と前向きだ。小学校6年生のときの担任の先生とは現在も交流が続いており、「義足をつくらせてもらっています」と臼井さん。出会った人たちとの関係を大切にして自らの道を極めながら、後輩へ技術を伝えていく日々が続いている。パラスポーツ女子走り幅跳びの村上清加選手も、現在臼井さんがサポートしている選手の一人(写真提供:義肢装具サポートセンター)

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