エルダー2020年7月号
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2020.722好きなことを仕事にしたレーシングカーデザインの巨匠由良拓也さんは、日本のモータースポーツの黎れい明めい期きから活躍するレーシングカーデザイナー。68歳になったいまも、自ら立ち上げた「ムーンクラフト株式会社」を率いて、さまざまなクルマの設計・開発を行っている。「彼には空気が見える」といわれる由良さんが生み出すマシンは、優れた空力設計と流りゅう麗れいなフォルムを兼ね備え、国内外から高い評価を得てきた。なかでも富士グランチャンピオンレース用に製作したMCS(ムーン・クラフト・スペシャル)シリーズは、圧倒的な強さを誇った。好奇心旺盛な由良さんは、本業であるレーシングカーのデザインだけにとどまらず、自ら監督となってレースに参戦したこともある。テレビ番組での軽妙でわかりやすいレース解説や、クルマ雑誌で執筆しているコラムのファンも多い。インスタントコーヒーのテレビCMで「違いがわかる男」として出演していたのをご記憶の方も多いだろう。由良さんがモータースポーツの世界に足をふみ入れたのは、まだ10代、高等専門学校に通う学生だったころのことだ。「とにかくクルマが大好きで。ただ、初めからクルマ関係の仕事に進むと決めていたわけではありません。当時住んでいた東京の目黒にレーシングカーをつくる会社があり、しょっちゅう覗きに行くうちに、『こんな面白い世界があるのか!』と思ったのが入り口です」と由良さんは語る。レーシングカーショーの準備に追われていたその会社は、毎日のように見に来る由良少年に「なかに入ってもいいよ」と声をかけ、招き入れた。そして、猫の手も借りたい会社の人に頼まれて手伝ううちに、由良さんはクルマづくりの魅力に取りつかれていく。1年後には通っていた学校を辞め、本格的にレーシングカー製作に打ち込むようになった。「10代のころは、丁でっ稚ちみたいなものでした。働きながら教えてもらう形です。その後、フリーの製作者として、あレーシングカーデザインの巨匠の新たな挑戦は日本代表選手のカヤックづくりムーンクラフト株式会社 代表取締役 由ゆ良ら拓也さんテーマ 2スポーツを第一線で支える高齢者 ②由良拓也さん。後ろにあるのは由良さんが手がけたカヤック(写真提供:ムーンクラフト株式会社)

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