エルダー2020年7月号
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2020.738まらず、外部の研修に誘い合って参加したり、シフトを組む際に協力し合ったりと、仕事をフォローし合う助け合いの関係が自発的に生まれているそうです。同社で働く高齢従業員の活躍ぶりについて、水村施設長は、「別業界の会社を65歳で定年退職して入職し、ヘルパーの仕事は初めてという方も多く在籍しています。こういう方々は視野が広いのか、仕事に臨む姿勢も柔軟で、ヘルパーの仕事の合間に修理や掃除など、いろいろな作業をしてくれます。高齢従業員のなかには、不得意な仕事がある人もいますが、ほかの従業員がフォローをするなど、お互いに助け合いながら仕事に取り組んでいます」と話します。今回は、主に介護支援を行っているスタッフに話を聞きました。利用者が話しやすく、若手の頼りになる存在門もん間ま久ひさ子こさん(65歳)は、60歳のときに看護師として入職し、デイサービスを担当して5年になります。看護師の資格のほかに、体操指導を行う「健康福祉運動指導者」の資格を放送大学で学んで取得し、心理学にも造ぞう詣けいがあります。25年間、宮城県内の病院に勤務していましたが、高齢の母親を介護するために定年の一年前に、故は自分自身で決めた目標の年齢に向かって働くことができるようになります。定年がないからこそ、いつまでもがんばろうと思えるのではないでしょうか」と、定年廃止が高齢従業員のモチベーションを高めたと評価します。また、「いつまでも楽しく働くこと」を念頭においた助言をしてきたという千葉プランナー。「『楽しく働く』には、年齢に関係なく従業員の自主性に委ねた職場づくりが重要で、少々の不都合があっても、従業員に任せて黙って見守ることが大切です」とくり返し伝えてきたそうです。このアドバイスを参考にした取組みが、社内レクリエーションです。それまで会社が行っていたレクリエーションの企画や運営を従業員に任せ、予算は会社が出すように変更したところ(一部は従業員による会費)、従業員が自主的に集まって「親睦会」を結成。従業員同士の交流を深めるイベントを次々に企画し、一体感を高めていきました。特に毎年、夏に行われる「盛岡・北上川ゴムボート川下り大会」への参加は事業所全体の一大イベントになっています。この大会は、8㎞下流のゴールを目ざしてゴムボートによる川下りのタイムを競うもので、同社のチームには還暦を超えた従業員も参加しました。こうした取組みは、事業所全体の活性化につながりました。いまでは、レクリエーションにとどみました」(菊地社長)介護施設に親を預けると、家族は安心して訪問が少なくなることは珍しいことではないかもしれません。しかし、菊地社長は、そうした思いを抱いた経験から一念発起し、「家族が会いに来る施設」をつくろうと考え、毎月の利用料を家族に直接施設まで支払いに来てもらう仕組みの老人介護施設を立ち上げました。直接の入金手続きは手間がかかるため振込みの方が何倍も効率的です。同社の水村眞紀子施設長は、この取組みについて、「毎月ご家族と会ってコミュニケーションがとれるので、双方の信頼関係の構築にもつながります」と説明します。「働けるうちは、いつまでも」を唱えて定年制廃止同社は2006年に定年を60歳から65歳に延長し、2016年には定年制度および継続雇用制度を廃止しました。このような先進的な定年制度の見直しは、菊地社長が日ごろから口にしている「働けるうちは、いつまでも」という口ぐせが体現されたものです。「私自身、『働くことに喜びがある』と実感しているので、『働く喜び』を高年齢だからと奪うことがないよう、定年制を廃止しました」(菊地社長)。千葉プランナーは、「定年廃止により、従業員

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