エルダー2020年7月号
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2020.742に置かれています。そのため、ここにきて企業は社員タイプ間の賃金の違いを点検し、見直すことが必要になっているのです。本連載で取り上げる高齢社員の賃金は、こうした「社員の多様化」に合わせて人事管理を再編するという大きな変化のなかで問われている問題であるという視点を持ってほしいと思います。さもないと高齢社員の賃金を、人事管理全体の視点からではなく、高齢社員の事情しか見ない狭い視点から考えるということになるからです。くり返しになりますが、人事管理は複数のタイプの社員を対象にし、各タイプ間のバランスを考えてつくられているシステムなので、そのなかの一タイプである高齢社員の人事管理は、ほかのタイプの社員との関係のなかで考えねばならない、ということを常に意識してほしいと思います。「賃金の基本」の第一歩3企業が賃金を決めるにあたって問われる最も基本的なことは、最初にとりあげた仮想事例のなかのAさんとBさんの苦情に集約されています。つまり2人の苦情にどう答えるかは、賃金を考える際に企業が対応しなければならない最パートタイム有期雇用労働法は、正社員と非正社員の間の『同一労働同一賃金』、つまり正社員と非正社員は同じ仕事であれば同じ賃金にしなければならないことを求めている。こう考える読者が多いかもしれませんが、同法の求めていることは、そうではありません。求めていることは、正社員と非正社員の間の「不合理な待遇差」の解消です。ですから正社員と非正社員は同じ仕事であっても賃金に違いがあってもよいのですが、その違いは「不合理な差」であってはならないということなのです。そうなると「不合理な差」をどのように判断するかが問題になります。この点についての同法のポイントは以下の二つです。第一は、正社員と「職務内容」、「職務内容・配置の変更範囲」が同じ場合には、非正社員の待遇は正社員と同じ取扱いにするという『均等待遇規定』です。第二は、それ以外の場合には、非正社員の待遇を、「職務内容」、「職務内容・配置の変更範囲」、「その他の事情」に応じて正社員とバランスがとれる形で決定するという『均衡待遇規定』です。現状を見ると均等待遇の対象になる非正社員はかぎられるので、多くの非正社員で問題になるのは均衡待遇になります。そうなると、正社員と非正社員の待遇差が均衡がとれているか否かをどう判断するかが問題になりますが、基本的には、①個々の待遇ごとに、②当該待遇の性質目的に照らして、「職務内容」、「職務内容・配置の変更範囲」、「その他の事情」の考慮要素から適切な考慮要素を選び、③その考慮要素に基づいて判断する、という手順をとります。以上のことに加えて、会社の社員に対する待遇についての説明義務が強化されたこともパートタイム有期雇用労働法の重要な点です。例えば、正社員との待遇差の内容と理由などについて非正社員から説明を求められた場合には、会社は説明することが義務づけられています。パートタイム有期雇用労働法のポイントコラム

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