エルダー2020年7月号
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株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者ならおさえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2020.748連載2回目の用語として、高齢者雇用を考えるうえで現在大きな動きがある「定年」を取り上げます。定年とは「一定の年齢に到達すると、仕事や役割から離れること」ですが、一般的には、定められた年齢で雇用関係が終了する「定年退職」をさして使われます。平均寿命の伸びと定年現在の定年退職年齢の主流は60歳です。この年齢ですが、会社の方針により、60歳ではなく70歳など定年年齢を先延ばしにすることも可能です。しかし、60歳を前倒しして会社独自のルールを設ける(例えば50歳に設定する)ことは、高齢者雇用に対する義務を定めている「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(以下「高年齢者雇用安定法」)により許されていません。ところで定年の年齢ですが、普遍的なものではありません。例えば筆者が初めて定年という用語を聞いたのは小学生のときでしたが、テレビでサザエさんのアニメを見ていて、当時54歳の波平さんが隠居に近いようなのんびりとした働き方をしているのも、55歳の定年間近だからと説明を受けて、妙に納得した記憶があります。この55歳というのは、大半の会社の定めであり法律上で明確になっていたわけではないのですが、60歳に引上げになった時期は法律上で明確です。高年齢者雇用安定法により1986(昭和61)年に60歳定年が努力義務となり、1994(平成6)年には60歳未満定年制が禁止されています。では、定年年齢の変化とはどういったきっかけで起きるのでしょうか。ポイントとなるのは「平均寿命」と「健康寿命」です。先ほど登場したサザエさんの放送開始年である1969年の平均寿命は男性69・18歳、女性74・67歳。60歳まで雇用が義務化された1994年は男性76・57歳、女性82・98歳(厚生労働省「簡易生命表」)で、男女ともに7歳以上の伸びを示しています。このような平均寿命の伸びに合わせて、健康寿命(健康上の問題で制約されることなく日常生活を送ることができる年齢)も伸びる傾向にあります。健康寿命までは体力的に十分に就業可能と考えると、平均寿命の伸びに合わせて定年年齢を見直すのは自然の流れともいえます。このような流れのなかで、2012年の高年齢者雇用安定法の改正により、現在の65歳までの雇用義務化が定められました。雇用義務化への対応法は大きく三つ定年退職の最低年齢は60歳ですが、それ以降「定年」第2回

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