エルダー2020年7月号
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2020.74漫画家 おざわゆきさんイドが大きく傷ついたと思うのですが、むしろ泰然と受けて、今度は自分から穏やかに質問していきます。あのシーンからは異世代間のコミュニケーションのあり方を考えさせられ、見事だと思いました。おざわ ありがとうございます。若い人からの否定的な見解に対して、人生経験豊かな高齢者ならではの受け答えをすることで、相手から有益な情報を引き出していく。そして年をとってからも謙虚な姿勢で新しい知識を吸収して成長していく。私もそうありたいと思う姿を描いたつもりです。―高齢ドライバーの運転ミスや、店の後継ぎがいないシャッター商店街など、高齢化にまつわる社会問題も物語の随所に取り入れられていますね。おざわ 社会で日々起きている問題を作品で取り上げたいと思っています。とくに高齢者をめぐる環境は、変化と進化のスピードが速いので、そのような現象を作品に落とし込みたいと思って描いてきました。―「変化や進化」とはどのようなことですか。おざわ 連載を始めた4年ほど前は、一人暮らしの高齢者が部屋を借りられないことが問題になっていました。それが近年は、「高齢者入居可」をうたう物件が増えています。家主さんや不動産仲介業者も無視できないほど、高齢者だけの世帯や、一人暮らしの高齢者が増えているのですね。連載を続けるなかで、どんどん環境が変わってきました。そんな変化も作品に織り込みました。高齢者を登場人物の中心に据えることで、次から次へと新しいテーマが生まれてきます。いまの世の中で起きている多くのことが、どこかで高齢化とつながっていることを感じています。―「生涯現役社会」という言葉を、どのように受け止めていらっしゃいますか?おざわ 70代、80代はお年寄りといわれますが、自分が年寄りだと思っていない人が増えているように感じます。実際、個人差はありますが、見た目も精神年齢も若い高齢者の人は周りにたくさんいます。そういうみなさんが、年齢で区分されることなく、すべての年代の人が同じテーブルについて仕事をしたり、活動に参加したりするような社会であってほしいと思います。ベテランだからこそ、そのキャリアや強みを活かして新しいものを生み出せることもあると思います。若い人たちの数が少なくなる一方で高齢者が増えるのですから、社会の活力が縮まないように、元気な高齢者がいつまでも活躍することを期待しています。高齢者をとりまく社会環境は急速に変化し続けている『傘寿まり子』ひょんなことから四世代同居の家を飛び出し、一人で新しい生き方を始める主人公まり子。若者たちとかかわりながら活き活きと生活する一方で、家族問題、孤独死、認知症など、高齢者が抱えるリアルな問題も随所に描かれる。『BE・LOVE』(講談社)で、2016年12月1日号より連載中。(聞き手・文/労働ジャーナリスト 鍋田周一撮影/中岡泰博)Ⓒおざわゆき/講談社

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